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日産自動車株式会社 DEI推進室 ご担当者インタビュー ~女性管理職がさらなる高みを目指す施策を!大好評だったキャリア・ビルディング研修~

日産自動車は20年前の2004年、ダイバーシティ推進の専門部署を設置しました。現在のDEI推進室で、当初は女性活躍推進、その後ダイバーシティ、インクルージョン&エクイティとミッションを広げてきました。このようにDEI推進においては、数々の先駆的な取り組みで日本の産業界をリードする存在ですが、実は女性管理職比率が10%を超えた後、伸び悩んでいました。背景にはロールモデルの不在があり、管理職になった後の支援が必要と考えたことから、今回、キャリア・コンサルティングとe-ラーニングをセットにしたキャリア・ビルディング研修を導入しました。DEI推進室 室長の小林利子氏と、今回の研修を企画し、自身も受講した課長の前多裕美氏に話を聞きました。

  • ―DEI推進室とはどのような部署でしょうか。今回の研修導入につながった課題なども含めて教えてください。

    小林さま 「この部署は20年前に、女性管理職を増やすことを主目的で設立されました。取り組みの成果で製造業の中では比較的高い、女性管理職比率10%を達成しました。その後、インクルージョン(受容)、すべての人に公平な機会を提供するエクイティ(公平)とテーマが広がり、今年度からDEI推進室という部署名に変わったところです。現在は、インクルーシブな職場づくりを目指し、女性のキャリアサポートのほか、男性も含めた育児や介護へのサポート、LGBTQ+施策などに取り組んでいます。直近ではDEIボトムアップの活動として、ERG(Employee Resource Group:従業員リソースグループ)を立ち上げました。ERGは、社員が共通の志のもと形成するネットワークで、日本では、ジェンダー、育児両立、LGBTQ+アライ、マルチカルチャーの4つのERGがあり、それらを幅広くカバーする仕組みをつくる役割も担っています。」

    前多さま 「私はDEI推進室の中でジェンダーダイバーシティ、女性活躍を担当しています。今、小林が申し上げた通り、部署が発足した2004年当時は、女性管理職比率はわずか1.6%でした。様々な施策を行い、2017年に10%を超えたのですが、そこから足踏みしています。理由は、毎年一定数の女性管理職が誕生している一方で、辞めていく人も少なくないからです。離職を招く要因の一つに、管理職になってからのキャリアパスが見えづらいという声が上がっていました。

    そのような背景に加えて、キャリアについて相談するなら社内より社外の人の方がいい、という社内ヒアリングやアンケートの結果もありました。そこで、外部の力を借りてもっと主体的にキャリアに向き合い、自らキャリアを構築できるキャリア デザインスキルを身に着けてほしいと考え、今回、ワークシフト研究所さんに、キャリア面談とe-ラーニングを組み合わせたキャリア・ビルディングの研修をお願いしました。」

    小林さま 「弊社は、女性活躍についてはもう20年取り組んでいるので、基本的な内容のものは必要ありません。多くの日本企業が、女性管理職を増やそうというフェーズにあるのに対し、我々の課題は、管理職になった女性がさらに上に行くにはどうサポートすべきかということ。ほかもいろいろと調べましたが、ワークシフト研究所さんは数少ない、この点に焦点を当てた内容でした。加えて英語対応もできる。弊社は外国人の従業員が全体の約6%おりまして、何かを導入する際には英語対応が必須です。今回は、キャリア・コンサルティングもe-ラーニングも日英両方でできるということが、導入の決め手になりました。」

  • ―導入の意思決定をする際には、社内に反対意見などはありましたか。

    小林さま 「日産自動車は、ダイバーシティとエクイティ&インクルージョンを経営戦略の一つに掲げており、年2回、社長の内田(社長兼最高経営責任者の内田誠氏)が議長を務め、役員を集めてDEIについて議論する場、「DEIカウンシル」を開催しています。そこでは、女性管理職比率が10%から伸びていないことなども議論しているので、このような育成策が必要だとコンセンサスを得ています。なので、導入自体はスムーズでした。」

    前多さま 「ただ、『なぜ、わざわざ社外のコンサルタントを頼む必要があるのか』『人事システムなど社内のことがわかっていないのではないか』といった声はありましたが、アンケート結果等から、キャリア相談は利害関係のない社外の人にしたいという管理職の方が多かったので、そこは丁寧に説明し、最後は『とりあえずやってみよう』というサポートを得ました。」

  • ―研修をやると決めて、告知して、申し込み状況など反響はいかがでしたか。

    前多さま 「今回が初めての試みでしたので、キャリア・コンサルティングの枠は、女性管理職の約1割、30名程度に設定しました。それが、社内に告知して半日で埋まってしまうほどの盛況ぶりで、ウェイティングも20人~30人いました。皆さん、このような機会を待っていたのですね。

    e-ラーニングは全女性管理職の3分の1、約100名が受講しました。このうち、キャリア・コンサルティングとセットで受けた人の満足率は97%。こんなに満足度の高い研修は初めてでした。受講した人からは『職場でうまく進められていなかった課題があったが、今回の学びから解決に向かうアクションを取ることができ、モチベーションの向上にもつながった』、『今回のような将来のキャリアを見据えて、自分の現在の悩みを壁打ちできるような機会は大変貴重だと感じた』といった前向きな声を多くもらっています。」

    小林さま 「キャリアにこれだけ悩みを抱えているのは、ひとえに、女性が働くうえでのロールモデルがないからだと思います。永遠の課題です。課長職の女性は増えてきましたが、その上の部長、役員となると『自分には無理かな』と思ってしまう。というのもみなさん、とてもハードに働いているからです。

    もちろん、男性が楽をしているとは思いません。ただし、男性の場合はいろいろなタイプの部長や役員がいますが、女性の場合、非常に突き抜けたような方たちがなっている場合が多いという現状があります。そのため、本当に頑張って課長職まで来たけれど、それで精一杯で、その先のキャリアパスが見えづらい状況にあるのです。」

    前多さま 「そう感じる女性は多いと思います。私自身も課長職ですが、今もギリギリでワークライフバランスを保っているなかで、そこからさらに上を目指すにはあれだけ働かなくてはいけないのかと思うと、正直少し躊躇します。年齢とともに体力、健康面の不安も出て来て、特に子どもがいる人はそう思うでしょう。

    そのなかでどうやって前向きにキャリアを築いていけばいいか。今回、1時間×2回のキャリア面談を受ける中で、自分のキャリアを棚卸し、私なりのキャリア、管理職像をつくっていけばいいのだとあらためて思いましたし、私だけでなく、同様の前向きな声は多く上がっていました。」

  • ―女性管理職の方たちがここまで悩み、相談の機会を欲していたことは意外でしたか。

    小林さま 「そうですね。今回の対象である女性管理職のみなさんは、本当に忙しい人たちばかり。そのなかで、キャリアプランシートの作成などかなり時間がかかるにも関わらず、37名もの人が手を挙げてくれました。忙しい彼女たちは、常にいろいろなことにプライオリティをつけて進めているわけですが、そこにこの研修と面談がポンと入ってきて、でもこれだけの希望者がいた。それほど、時間をかけてでもやりたいと思ってくれたのだなと思いました。」

    前多さま 「企画者として私も実際に受けたのですが、このキャリア面談は、仕事だけでなく、人生設計そのものでした。事前に用意するキャリアプランシートは、自分だけではなく夫や子ども、家族一人ひとり が5年後、10年後に何をしているかと、そこまで考えて書く内容でした。20歳から今までと、ここから60歳までの40年間にわたる人生の棚卸です。

    普段は目の前の仕事、日々の生活をこなすだけで精一杯で、キャリアについて考える余裕などありません。でも、改めてこのような機会を提供すると、私のキャリアとは何だろう、この先60歳、70歳までどのように生きていけばいいのかと、考えるきっかけになるのだと思いました。

    面談では、自分のキャリアを進めるためのキーとなる上司の巻き込み、パートナーとの話し合いが大事だと言われ、実際に話す機会も設けました。このようなきっかけがなければ、なかなかキャリアの話を上司にはできないと思います。今回、私が漠然と考えていたキャリア、数年後にどうしたいかということをしっかり言えたことで、上司は、私のキャリアを実現するためにどうすべきか考えて動いてくれました。この研修があったからこそ、起きたことでした。」

  • ―参加されたほかの方たちも変化を感じましたか。

    前多さま 「みなさん、やはり自分の強みを再認識し、キャリアビジョンが明確になったことで仕事へのモチベーションがさらに上がったように感じます。この研修をきっかけに、女性管理職同士の横のつながりを作っていこうという動きもありましたので、それも今、検討を進めています。」

  • ―個人個人にとって実りのある内容でした。組織としてはどうでしたか。

    前多さま 「満足度97%と、個人の満足度がとても高かったことに加えて、ワークシフト研究所さんからは、社員のキャリアに対する意識や傾向、組織の課題も提言していただきました。やはり外からの評価は客観的で、私たちも冷静に受け止めなければいけません。フィードバックの内容は様々で、なかには耳が痛いものもありました。それらを、外から見るとこうなのだと人事部内で共有し、よりよい職場にするために改めて取り組んでいるところです。」

    小林さま 「フィードバックの中で、私がすごく嬉しかったのは、愛社精神が強いと言っていただいたこと。管理職の女性同士が話すと、愚痴ではありませんが、何かと『もっとこうしてほしいよね』など、会社に対する意見が出ることが多いです。でも、何だかんだ言いながらみんな日産が好きで、仕事が好きなんだなと。それは、つまりポテンシャルがあるということで、いろいろと会社側、制度側でやるべきことはありますが、やれば響く人たちばかりなのです。今回、日産が好きで働いてくれている人たちだと再確認でき、何かこちらもやる気が出てきました。」

    前多さま 「そうですね。意欲が高く、優秀だとも言ってもらって、私も本当に嬉しかったです。同時に、この層をさらに上級管理職へと育てるために、彼女たちの心に寄り添い、背中を押してあげる必要があるとの提言もいただきました。どうしたら背中を押せるか、ますます真剣に取り組んでいかなければと思いました。

    今回、キャリア相談はしがらみのない外部の人にしたいというニーズから、この研修の企画がスタートしました。もし、個々にキャリアカウンセリングを受けるような形にしたら、個人に対しては有効でも、組織としてどうすべきかが解決できないままでした。ワークシフト研究所さんにお願いし、女性管理職のキャリア意識、傾向を知ることが出来たことは、本当に組織にとってプラスでした。」

  • ―今後はどのような展開をお考えですか。

    前多さま 「今回は初めての試みということもあり、 面談の枠を30あまりで設定したのですが、まったく足りていませんでしたので、来年度以降も継続したいと思っています。また、事後のアンケートでは、77%の人が『男女問わず管理職に受けてほしい』と回答していました。これも実現に向けて進めていけたらと思っています。

    e-ラーニングだけを受講した人たちの満足度も高く、80%以上でした。アンケートはもちろん、個人的にも『すごく中身のいいeラーニングでした』という声をたくさんもらっています。自部門の役員(男性)に見せたいというリクエストもありました。

    振り返るとこれまでは、管理職が改めてキャリア理論を学ぶ機会がありませんでした。今回、その理論や、例えば同じことをしても男女で受け止め方が違うこと、自分が部下をマネジメントする上で気を付けるべきことなどを体系的に学ぶことができました。何となく感じていたことが腹落ちしたような感覚です。全体を通して『あなたらしいキャリアを構築するために何が重要ですか』と問われるのです。これは確かに、部門の役員や上司など周りの人たちにも理解してほしい内容ですし、男性にとっても自分の人生設計に資する内容なので、受けると意識が変わると思います。女性に限らず全体へ展開できたらと思っています。」

    小林さま 「少し大きな話になりますが、社長の内田は就任してからずっと、ビジネストランスフォーメーションとカルチャートランスフォーメーション、これを両輪で進めていくと言い続けています。カルチャートランスフォーメーションの重要な要素の一つがDEIであり、現在は、さらにほかの要素も取り込んだOUR NISSANというキャンペーンを開始し、企業文化改革に取り組んでいるところです。

    そのなかに、日産リーダーシップウェイという取り組みがあります。リーダーとしてのマインドセット、マインドセットというと頭で考えることだと思いがちですが、心でも感じるべきものがあるという共通の認識を持ち、変化の激しい自動車業界に対応できるリーダーを育成するというものです。今年度、本格的にスタートしました。今回の研修を終えて、まさにOUR NISSANの一環で、女性だけではなく、すべての管理職が自分のキャリア、ひいては人生について前向きに考えられるようなサポートをできればいいなと思いました。」

  • ―最後に、これからワークシフト研究所の研修を導入しようと考えている他社さんへ、メッセージをお願いします。

    前多さま 「今回、キャリアの相談をするなら外部の方がいいという要望を受けて、お願いさせていただき、本当に満足のいく結果を得ることができました。キャリア面談とe-ラーニングを通じて社員のモチベーションが上がっただけではなく、組織への提言も併せていただけたことが本当に有益でした。」

    小林さま 「加えて私が思ったのは、キャリアサポートを外注すると聞くと、人事の方は恐らく、それは無責任だと感じてしまうのではということ。でも、まったくそんなことはありません。受ける側は、絶対に業務の評価をされない外部のプロの方に、現在の仕事だけではなく、家族の状況や自分が歩んできた人生の話を聞いてもらい、導いていただく。これによって初めて、この先の自分のキャリアを前向きに考えられるようになる。実際、そのような人が多かったと思います。

    このように心理的安全性が担保されやすい外部の方にお願いすることも、入口としてはすごくいいと思うのです。その次に上司、社内の人事などと、異動など具体的なキャリアの話をします。その段階は社内でしかできないので、そこをしっかりとやっていけばいいと思いました。」

  • ―実施してよかったですか。

    前多さま 「はい。私たちがやってきた施策の中でもいちばんの反響と満足度でした(笑)」

    小林さま 「反響と満足、本当にそうですね(笑)」


    ―御社のDEIの取り組みのお話を興味深くお聞きできました。ありがとうございました。

    取材・ライター:山田雅子

  • インタビュー後記

    日産自動車様には、2023年度に初めて弊社のプログラムを導入いただきました。日産は女性活躍が進んでいることで有名ですが、やはり課題も一歩進んだ「上級管理職」へのキャリアの課題でした。

    対象となる方々は皆、スキルやモチベーションも高いので、今回は上級管理職に向けたマインド醸成に焦点を当て、女性管理職向けの2回の1on1キャリアコンサルティングと、E-learningをセットでカスタマイズいたしました。社外コンサルティングならではの、客観的な、そして社内ではなかなか吐露できない、女性管理職の皆さんの悩みや将来の展望を、仕事・家庭・自身のプライベートの面から整理できたのではないかと思います。

    日産の女性管理職の皆さんはとても優秀な方たちで、高い満足度が得られて非常に嬉しく思います。今回、手上げ式でご参加いただき、ウェイティングリストにもたくさんいらっしゃったということでまた来年度も同様にご提供出来たら光栄です。小林様、前多様、ありがとうございました。(小早川優子)