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2025/12/18

コラム

【コラム】「女性社員が管理職になりたがらないんです」 構造的な課題と解決策 Vol.1

ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川優子

小早川 優子

ワークシフト研究所 代表取締役社長

「女性社員が管理職になりたがらない」背景には何があるのか?入社時は高かった志望が年々低下する要因をデータと現場の声から解明し、企業が取るべき対策を提示。女性のキャリア意欲、モチベーションと構造的課題に迫る。

企業の成長には組織の多様化が急務

ここ数年、多くの企業で女性管理職を育成する必要性に迫られ、弊社にも「女性管理職」に関する相談・依頼を受けることが増えている。 内容は、女性管理職として必要なスキルや能力の開発に関することもあれば、「あと半年で管理職を5名増やしたい」という切羽詰まったもの、あるいは、女性社員向けだけでなく、その上司・管理職に対する部下育成など、多岐に渡る。

組織は常に成長し続けなくてはならない。生物の進化と同様、環境の変化に柔軟に対応しないと組織は生き残れない。

「これまでと同質のメンバー」「これまでと同じように」やっていて、生き残ることができる時代ではないのは誰しも頭ではわかっている。釈迦に説法で恐縮だが、企業の成長にはイノベーションが必要であり、イノベーションには組織の多様化が急務である。

中途半端な多様化組織には意味がなく、多様化組織の利点をイノベーションに繋げるほどのインパクトを起こすには、これまでと同質のメンバーではない、つまりマイノリティが意思決定層に入り、マイノリティの意見が反映される仕組みとしなくてはならない。このような人的資本、経営戦略的な視点からも女性の管理職登用は急務な課題である。

「女性が管理職になりたがらないんです」への違和感

相談を受ける中で、多くの人事担当者が口を揃えて言う言葉に「女性が管理職になりたがらない」というものがある。 私はこれを聞くたびに毎回違和感を覚えている。

社員が「管理職になりたがらない」問題は、性別にかかわらず最近の20代に増加している現象であるという人も多い。若手社員の育成については「最近の若い世代は甘やかされている」「リーダーを体験することで理解するはず、だからまずはリーダーにするつもり」など、叱咤激励しながら若手社員をリーダーにしようとする企業は多い。

しかし育成対象が「女性」となるとなぜか話が変わってしまうことがある。女性が管理職になりたがらない→だから管理職を打診しない→よって管理職が増えない、という展開になる。先の若手社員のケースと同じように、上司が説得したり、対話したり、叱咤激励する様子が見て取れないことが多い。

確認の意味も含め、「なぜ御社の女性社員は管理職になりたがらないのですか?」と質問すると、大抵「うーん、どうしてでしょうね、働きやすい会社だと思うんですけどね」という返事で終わることが多い。または「リーダー教育をしても、辞めてしまう女性が多い」と嘆く人もいる。

女性社員が管理職になりたくない理由、リーダー教育をした女性が辞めてしまう理由について、女性社員としっかり対話し、彼女達の本音を聞き出し、真の課題を見つけ対策している企業は少ないと感じている。

 

「女性が管理職になりたがらない」構造的な課題を読み解く

独立行政法人 国立女性教育会館から「令和元年度 男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第五回調査)報告書」(以下「報告書」)が出されている。この資料は、2015年に民間企業に新入社員として入社した男女のキャリアの5年の意識変化を追跡した報告書である。該当報告書、および弊社がこれまでに行った調査、その他民間企業などのデータから、「女性が管理職になりたがらない」構造的な課題を整理し、有効な解決策をまとめる。

女性社員の管理職志望は最初から低いのか?

報告書によると、入社時に管理職を希望する女性は約60%、男性は97%いることが示されており、男性と比較すると少ないとはいえ、絶対数が少ないとは言えない状況である。

管理職になりたい、と思っていた女性社員はその後どうなるか

報告書によると、入社時に管理職を希望していた女性の割合は勤務年数を重ねる毎に低くなっている。1年目には60%あった管理職に対する志望割合が、2年目には46.4%へ、そして5年目には37.6%に減っている。男性の場合、2年目以降微減はするものの、5年目でも87.9%を維持している。男性の減少率が10%弱であるのに対して女性のそれは20%を超える。

特に女性の場合、1年目から2年目の管理職志望の減少率が顕著であり、男性のそれの3倍に登っている。

これらの調査結果から、女性は最初から管理職に対する意欲が低いのではなく、勤務年数を重ね、職場からなんらかの影響を受けることでモチベーションが下がっていく、ということが理解できる。

なぜ時間の経過とともに女性の意欲が下がって行くのか、管理職に対するモチベーション減退を生む要因は何なのか、女性社員の心理変化に働きかける要因について考えてみる。

なぜ管理職志向が年毎に下がるのか

報告書によると、管理職志向のない女性の理由(複数回答)として以下が挙げられる。

管理職を目指したくない理由(複数回答)
・「仕事と家庭の両立が困難になる」(69.3%)
・「責任が重くなる」(48.9%)
・「自分には能力がない」(40.1%)
・「仕事の量が増えるから」(33.6%)
・「周りに同性の管理職がいないから」(18.2%)

男性との違いが顕著であるのは、仕事と家庭の両立が困難になること、自分には能力がないこと、そして同性の管理職がいないことである。ちなみに仕事の量が増えること、責任が重くなることにより管理職を志望しない、と答えたのは女性より男性の方が多い。

女性は、仕事と家庭の両立の困難さが管理職への意欲を下げている最大要因であることがわかる。別の民間企業の調査[1]では、「風土と制度が整っていれば」という条件付きであれば、出産後に管理職を目指す女性が79.6%いる、という結果となっており、出産経験者も、仕事と家庭を両立できることと管理職への意欲が相関することを示している。

報告書の対象は入社5年目の社員である。日本の平均から考えると、結婚していない女性の方が多いであろう。にもかかわらず、「両立の実現」が管理職志向に大きな影響を与えていることがわかる。これは、実際に同じ組織に両立しながら管理職として働いている女性が少ない現実に影響を受けていると思われる。

女性のモチベーションは「子どもを産んでもキャリアを継続できるか?」

多くの女性は、自分が子どもを産んでもキャリアを築き続けることができるかを慎重に吟味している。もし育児休業から復帰した女性が優秀であっても、残業できないがために昇進が遅れたり、マミートラックにはまった先輩を見るにつけ、自分が出産した場合もキャリアアップを望めないだろう、とモチベーションを低下させていく。元々優秀で活躍していた女性が出産を機に活躍していない(またはできていない)状況を見て、例え組織が女性にリーダーや管理職などを期待しても辞めてしまう場合も多くある。

次に顕著な要因として、能力の欠如があるが、この質問では実際の能力の高さより、女性自身が「自分は能力がないと認識している」点がポイントである。つまり、ここでは実際のスキルや能力の欠如より「自信」の欠如が問題であることがわかる。

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[1] 一般財団法人1more Baby応援団「夫婦の出産意識調査 2015」 働くママ361人へのアンケート

※本コラムは、2020年8月17日に掲載した記事をもとに、最新の状況や知見を踏まえて再構成・加筆修正したものです。

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