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2020/9/23

コラム

「女性社員が管理職になりたがらないんです」の構造的な課題と解決策 Vol.2

女性社員には管理職への「見えない壁」が多い

ワークシフト研究所
代表取締役社長 小早川

2018年に行った弊社の調査結果[1]でも、女性の管理職に対する意欲の低下は「自信の低下」であることがわかっている。マイノリティであること、両立ができるか不安であること、これまではスーパーウーマンのような女性しか昇進していないこと、そしてそのような女性と比較されること、などから女性の劣等感が必要以上に刺激され、自分を過小評価し、管理職に対する自信と意欲を低めていることがわかっている。

自信をなくす要因として、職場で蔓延するジェンダーバイアスがある。
代表的なものとして、女性のみに雑務を頼むこと、期待する要件やアドバイスが男性と女性とで違うこと、女性への助言は会社が求めるリーダー像とズレがある、などがある。

このようなバイアスが日常的に発揮されることで、女性は男性に比べ、自分は職場で何を期待されているのか混乱する。相手の期待に沿うスキルは認知的共感力の一つであり、男性より女性の方が強いと言われている。真面目な女性ほど期待に答えようとするあまり、求められる女性らしさと男性らしさを内包するリーダー像との乖離に混乱する。受け取る期待やメッセージの混乱は自信の欠如を招く。

職場で発生するバイアスは他にもある。
例えば、チャレンジングなポジションが1席空いていた場合は男性部下を推薦することが多い。これまで男性が推薦されることが多かったゆえに男性にした方が良い、と前例に習うことが正しいと思うこともバイアスの一つである。また、男性は自分より年少の男性に対してはあえて挑戦させるが、女性に対しては挑戦させることより守りたい気持ちが強くなるバイアスも存在する。これらのバイアスによって、女性の「挑戦機会」「学習機会」「成長機会」を上司が奪っている場合も多い。これらが重なって、機会に恵まれた男性に比べ年次を重ねる度に男女のスキルの差がつき、女性の自信が削がれ、リーダーとして期待されていないと認識し、管理職に対する意欲が失われていく。

報告書でも女性は男性と比較して、自分は組織に期待されていると感じておらず、リーダーシップを求められていない、という結果が出ており、女性管理職の志望割合に影響を与えていることがみてとれる。

他にも女性の管理職に対する自信の欠如や減退には、現時点の女性管理職は男性管理職より残業時間が長いことが多く[2]、先輩の女性のような働き方であれば管理職を避けたいと考える、また現時点での女性管理職は圧倒的にマイノリティとなることで組織に対して不信感を抱きやすくなる[3]、ということも原因であるであろう。

したがって、女性の管理職に対する意欲を減退させているのは、女性個人の意識や女性という性別特有の問題なのではなく、上司や同僚が発する何気無い言葉や無邪気な発言に潜む性別役割分業的思考、または会社内で長期に渡って培われたジェンダーに囚われた思い込み、マイノリティ故に発生する構造上のバイアスであるといえる。
また、女性本人も、例えば完璧に家事育児をこなす専業主婦の自身の母親が身近なロールモデルの場合、自身のもつ無意識のジェンダーバイアスや社会からの良い母親像にとらわれて、意識しなければ、もしくは例え意識していても、家庭も仕事も全方向に完璧であろうと板挟みになることも多い。

これらの思い込みが予言の自己成就となり、女性がキャリアアップを望まなくなる、ということはいたって自然な流れであると言える。[4]


[1] 株式会社ワークシフト研究所 2018年 働く女性の管理職に対する意識調査

[2] 「働き方の男女不平等 理論と実証分析」山口一男

[3] 「影響力の武器」ロバート・B・チャルディーニ

[4] 「ステレオタイプの科学」クロード・スティール


◆関連コラム
「女性社員が管理職になりたがらないんです」の構造的な課題と解決策 Vol.1

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