Case導入事例
横浜ゴム株式会社
横浜ゴム株式会社 ご担当者インタビュー ~女性活躍推進からダイバーシティ&インクルージョンへ ミッションの変化に合わせて研修を実施~
部署横断で活動している社内タスクフォース、ダイバーシティ&インクルージョン推進タスクにて、ワークシフト研究所の研修を導入していただきました。同タスクは、2016年に女性活躍推進タスクフォースとして発足。その後、より多様な人材の活躍へとミッションを発展させ、名称もダイバーシティ&インクルージョン推進タスクとなりました。ミッションの変化に合わせて女性向け研修、管理職向け研修、全社向けダイバーシティ研修など、様々な層を網羅した形で弊社研修を導入していただいています。導入の決め手や成果などについて、研修を中心的な立場で推進した西本奈穂氏に話を聞きました。(取材日:2024/2/6)
YOKOHAMA TIRE MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD.
西本奈穂氏
タイ法人でアドミニストレーション業務に従事。元は本社の人事部におり、そのときに部署横断で立ち上がった女性活躍推進タスクフォースに参画。タイ法人への異動後も引き続き参画し、海外拠点の視点から様々な意見を発信中
―ワークシフト研究所の研修を導入することになった経緯、導入の決め手を教えてください。
西本さま 「私たちのタスクは、最初は「女性活躍推進タスク」としてスタートしたので、当初は、女性活躍推進法に沿った推進施策を打ち出すにはどうしたらいいかと考えていました。勤続年数が長い女性の中には、研修を受ける機会があまりなかった人もいました。そのような人たちがビジネススキルや経営層の視点を持つにはどのようなことを学べばいいか。思い悩んでいるときに、このタスクフォースを立ち上げた若林(人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進タスク タスクリーダーの若林真知江氏)が、国保先生の書籍「働く女子のキャリア格差」を読み、ワークシフト研究所の考えに共鳴、目指す方向性が一致したので問い合わせをしました。
導入の決め手は、内容に加えて、当社の実情に合わせてカスタマイズをしてくれること。当社の場合、女性社員のバックグラウンドにバラつきがあります。事情をくみ取ったうえで設計してもらえるということで、これなら当社独自のスタイルでできるのではないかと考えたのです。
女性社員のなかには総合職で入社した人、一般職で入社した人、派遣から社員に切り替わった人など背景もモチベーションも多様ななかで、どのように施策を打っていくべきかと悩んでいました。そのようなことも密に相談にのってもらえました。実際、研修では少人数のグループに分かれてディスカッションをする場面があります。内容によって同質の組み合わせがよかったり、あえてバラバラなメンバーで多様性があったほうがよかったり、事前に相談をしてきめ細かに対応してもらいました。
導入にあたり、社内の意思決定はスムーズに進んだのですが、むしろ、対象者である女性社員に『プチMBA』の『MBA』に気後れしてしまう人もいました。「私にはMBAなんて」と、少しハードルが高かったようですが、「あくまでも『プチ』だから」と背中を押して、集まってもらいました。」-
―女性向けのプチMBA研修を皮切りに、管理職向け、全社員向けと研修の対象も内容も広がっています。その歩みを教えてください。
西本さま 「最初は、女性社員向けの『プチMBA』だったのですが、やっていくなかで徐々に、対象は女性だけではないという課題感が出てきました。このニーズは全員にあるはずです。社内でヒアリングを行い、女性の活躍推進というミッションはある程度、達成できたという感触もありました。社会情勢としても、女性だけではなく多様な属性、ダイバーシティに目を向けるようになってきていたので、私たちもミッションを女性活躍推進からダイバーシティ推進に発展させました。
タスクフォースの名前も「ダイバーシティ&インクルージョン推進タスク」に変え、『プチMBA』も、管理職層向けの研修とこれから管理職になる人たちに向けたリーダーシップ研修の2本に改編。ダイバーシティやこれからのリーダーシップを学ぶ機会に発展させました。」 -
―研修を実施して、社内にどのような変化や成果がありましたか。
西本さま 「一昔前は、トップダウンの「俺についてこい」的な強いリーダーが主流で、これがリーダーシップだと植え付けられていました。でも、この研修を受けた女性は、例えば後ろから支えるスタイルなどリーダーにはいろいろなやり方があると学び、「あ、もしかしたら私にもできるかも」と思ってくれました。実際、ある人はこの研修をきっかけに、ずっと断っていた管理職の打診を受けてくれました。多様なリーダー像の一つに、自分にもできそうだと思えるスタイルがあり、決断できたそうです。受講者のキャリアを後押しができたことは、企画した立場としてとても嬉しく思いました。
当社の女性管理職比率は、まだ5%未満。モチベーションが1人でもネガティブからポジティブに変化すれば影響は大きいです。そのような人がリーダーになり、新しいリーダーシップのスタイルを見せることで一歩ずつ、多様化が進んでいくと期待しています。
レクチャーで多様なリーダーシップを学んだあとに、ケースを通して参加者同士でディスカッションをしたこともよかったです。普段は自分の業務の関係者以外の人とはあまり話す機会がありませんし、ましてやリーダーシップについて話すことはありません。研修を通じて横のつながりができたことも大きな成果です。
ちょうどコロナ禍でオンライン研修が普及して、みんなが気軽に参加できるようになったこともよかったですね。時短の社員なども参加できるようになり、モチベーションを絶やさずにいられることも刺激になっていると思います。」 -
―多様な部下がいる上司を対象とした管理職向け研修はいかがでしたか。
西本さま 「それこそ管理職の横のつながりができた点が成果だったと思います。参加は希望制だったので、まさに今、マネジメントなど何かしらリーダーシップに課題を感じている人、悩みがある人などが参加してくれました。よその部長や課長がどのようにマネジメントをしているのか、自分より年齢が上の人たちをマネジメントすることへの戸惑いなどケースを通して悩みを共有し、ソリューションを出していけたことがよかったです。
従来式のリーダーシップが植え付けられているのは、現在の管理職も同じでロールモデルがありません。一方で部下は多様になり、マネジメントが複雑になっています。多様なリーダーシップを知る最初の一歩になったと思います。
今はまた、全社向けに『ダイバーシティとは何か』という研修もしていただいていて、大盛況です。ダイバーシティという言葉は聞くので、社内のみなさんも関心が高まっているのだと思います。女性向け、管理職向け、全社向けと全層を網羅した研修のおかげで、ダイバーシティという言葉、考え方は着実に社内に浸透してきています。
経営層も、タスクフォースがスタートした当初こそ、あまり関心は高くなかったようですが、今は、ダイバーシティ&インクルージョン(DI)の取り組みを推進すると企業価値が上がり、それが株価に反映される時代です。経営層の意識も随分と変わりました。人的資本情報開示義務化の影響などもあるとは思いますが、その波に乗っかれた感じがあります。最初は両立支援のための制度整備でしたが、女性活躍推進からダイバーシティ、そしてダイバーシティ&インクルージョンへとタスクフォースのミッションが進化し、多様な人がお互いを活かしあって活躍する、それを会社として取り組むことが価値であると、全社的に意識が変わってきたと思います。この1年くらいで、ぐっと流れが変わってきました。」 -
―今後、こんな視点で研修やってみたいといった希望はありますか。
西本さま 「やはり、横浜ゴムで働いていてよかったと、この人のために働きたいと思えるようなチームづくりはずっと取り組んでいきたいと思っています。この何年か考えてきて、結局、モチベーションはそこにあると思うからです。この仕事が楽しいから頑張れる。この人のためなら頑張れる。チームビルディングをやってみたいです。
それにはいろいろな要素があると思いますが、リーダーシップ研修やダイバーシティ研修もその一つ。チーム一丸となって目標達成するための土台づくりになっているので、これからも注力して、会社の目標達成につなげていきたいと思っています。」 -
―最後にタスクフォースの活動や研修を通じての感想をお願いします。
西本さま 「タスクフォースは、複数の部署から集まったメンバーで構成されています。部署ごとに雰囲気や働き方は異なるので、例えばディスカッションで、私の経験から「このようにしたい」という話をすると、それぞれの部署からの異なる視点、意見をもらえます。他部署の生の意見を聞くことでより多くの部署に寄り添った施策を考えることができ、それをタスクフォースで実現できる。それが何よりのタスクのよさだと感じています。それぞれの背景や状況を組み込むことで、今回の研修もカスタマイズできました。
研修を受けた人のアンケートでも、やはりケースでいろいろな部署、立場の人と話し、意見を聞けたことがよかったという声が多かったです。オンラインでやっているので世界中のヨコハマグループのメンバーが参加してくれます。みなさん、自分の部署では得られない発想をもらえることがかなり刺激になったようです。今まで、自分の部署や上司だけを見ていたので、一つのやり方しか知らなかったけれど、実はほかのやり方や視点があったと気づき、リスキリングの必要性を感じたという声が多かったです。
私自身も、いろいろ考えるところがありました。今後、求められるかはわかりませんが(笑)、もし管理職への打診を受けたとしたら、完璧である必要はない、「いろいろな人のいいところを集めればリーダーってできるのだな」と思えるようになりました。タスクフォースの活動、特にこの研修を通じて、いろいろな人たちの話を聞くことで、マインドが変わってきました。私にとっても大きな収穫でした。」 -
―どうもありがとうございました。
取材・ライター:山田雅子
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インタビュー後記
横浜ゴム様には、2020年から2022度の3カ年をかけて複数の階層を対象に研修をご導入いただきました。全6回の女性社員向け育成研修、管理職向けのダイバーシティマ研修、新任管理職向けのリーダーシップ研修など、ご担当者さまと相談を重ね、ご要望に合わせてカスタマイズしてご提供しました。
横浜ゴムの社員の皆さまはとても素直で真摯な方が多く、新しい学びにも高い知的好奇心をもって参加いただいたことが印象的でした。ご担当者さまの熱意が参加者に伝わったことで、参加者からも高評価をいただけました。最初は遠慮がちだった女性社員の方も、回を重ねるごとに積極的に質問や発言されるようになったり「自分の意見が偏っているのがよくわかりとても参考になります。他部門や世代の違う方のご意見は参考になりました。」と感想をいただきました。今後も横浜ゴムさまの課題解決のお手伝いが出来たら幸いです。西本さま、若林さま、小林さま、そしてダイバーシティ&インクルージョン推進タスクの皆さま、ありがとうございました。(小早川優子)