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株式会社ワークシフト研究所

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株式会社J-オイルミルズ 人事部 DE&I推進室 ご担当者インタビュー ~社内の意識をガラリと変えた女性向け経営塾 両立支援から具体的に活躍を促進するフェーズへ〜

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進する全社横断型の取り組み「カシオペアWプロジェクト」。当初は仕事と育児や介護などの両立支援の制度などを整え、次の段階として取り組んだのが女性に向けた活躍支援です。ワークシフト研究所とともに、管理職手前の女性を対象とした研修「カシオペアW経営塾(以下、経営塾)」を実施しました。月1回×6カ月間の講義とグループワークを組み合わせたプログラムで、現在2期生まで終了したところです。当事者の女性と直属上司、そして経営陣まで全社の意識は確実に変わってきています。当初からプロジェクトに関わって来た人事部 DE&I推進室の後藤亜弓室長と土倉則子氏に話を聞きました。(取材日:2024/5/15)

  • ―カシオペアWプロジェクト、経営塾が始まった経緯を教えてください。

    後藤さま
    現在のDE&I推進室は2022年の4月にできましたが、遡ってその5年前にカシオペアWプロジェクトがスタートしました。女性の能力が十分に発揮できていないという問題意識のもと、当時、私も含めた6人のメンバーが部署横断で集まりました。当時の女性管理職比率が約5%。低い管理職比率と、その一つ下のリーダー層ポジションの人数の少なさ、女性の職域が限定されていることなどに課題感を持っていました。なお、今は取り組みの成果もあって、管理職比率は少し上がって6.3%です。

    当社は食品メーカーなので、女性が活躍していそうなイメージがあると思いますが、生産職や営業職の女性は少なく、管理職も少ないというのが実情でした。例えば営業先には昔ながらの気質の問屋さんもあり、そのようなところでは女性が来ることを歓迎しない空気も残っていました。女性の能力や気質の問題だけではない、業界構造的な活躍のしにくさもありました。

    この女性が前面に出にくい空気が、女性の自信をなくすことにもつながっています。昔から当社の女性社員はちょっと控えめでガツガツとしたタイプが少ないのですが、それはこの空気が一因となって、自分にバイアスをかけている女性が多いからではないかと思うのです。上司もそうです。全く悪気なく「女性にこんな仕事を与えたらかわいそうだ」と思い、育て方も男性社員とは違ってしまいます。このような壁を取り除きたくて、5年前にカシオペアWプロジェクトが始まっています。

    実際、全社で女性活躍に関するアンケート調査を行い、そのなかで管理職になりたいかを聞いたところ、「なりたくない」と答えた女性が多数を占めました。理由は、一つは仕事と育児などプライベート部分との両立への不安で、もう一つが「自信がない」。男性と比べてリーダーシップを発揮する経験が少なく、経験がないから自信も持てない状況にありました。そこで「『自分軸』を見つける」、「『ビジネスの面白さ』を体感する」をコンセプトに、リアルな事業課題解決に取り組む経験を通じて自分らしいリーダーシップを磨く、経営塾の取り組みが始まりました。

  • ―経営塾のパートナーとしてワークシフト研究所を選んだ理由を教えてください。

    後藤さま
    最初は人づてに小早川先生(弊社代表取締役社長の小早川優子)がいいというお話を聞き、そこから私も先生の本を読み、「育休プチMBA」の講座を見学させていただき、国保先生(弊社所長の国保祥子)のお話も聞きました。そこで感じたのは女性を甘やかさないということ。フラットに情報提供しながら、身につけるべきことをしっかり伝えてくれるのでは、と感じました。

    加えて、最終的な決め手となったのはカスタマイズ形式で研修設計できるという点です。例えば「相談部屋」もその1つです。経営塾は、6カ月かけてチームでディスカッションやワークを行い、最終的に経営陣に発表するという形式です。「講義が1カ月ごとで、間が空くとやや不安なので、もう少し受講生同士や先生との関わり合いを増やせないか」と要望を挙げると、先生から「相談部屋」という形の提案がありました。これは、個別に受講生チームから先生へオンライン面談ができるというもので、発表に向けた進捗の共有や悩みを相談できるというものです。これは、みんなかなり役に立ったと評判ですよね?

    土倉さま
    はい。1期生も2期生もかなり。初回の相談部屋は遠慮がちでしたが、やはりゴールが経営層への発表ということで、相談したいこと、先生のアイデアを聞きたいことなどがいろいろと出てきます。1回につき1時間という設定なのですが、みなさん、1時間しっかり使って相談していました。先生は叱咤激励してくれたり、新しい視点を提示してくれたりと、すごく柔軟に対応してくれました。

    後藤さま
    経営塾は6カ月間かけて計6回行いますが、1回終わるごとに必ず次回に活かすための振り返りと相談を事務局間で行いました。やはりやっていくなかで足りないところなどが出てくるので、最初に6カ月間の内容を固めるのではなく、柔軟に修正し、受講生の様子も見ながら進めていきました。

  • ―充実した内容ですね。実施にあたって「なぜ女性だけが対象なのか」といった声も出たのではありませんか。

    後藤さま
    はい。声が挙がりました。というのも当社は、社員が受けたい研修を選ぶという自主性を大事にしています。男女平等に実施している研修があるのだから、そこに手を挙げればいいということです。なので、管理職比率など具体的な数字を示しながら、女性のマインドセットから始める必要があることを丁寧に説明して回りました。理解してもらうのはなかなか大変でしたね。

    でも、そのなかで支えてくれたのがカシオペアWプロジェクトで、メンバーには「この研修どう?やりたい?」と何度も聞きました。

    土倉さま
    そうですね。私はまさにそのときのメンバーで、「すごく壮大なことを考えているのだな」というのが経営塾への第一印象でした。ちょうど私自身も受講対象になるような年齢です。自分にあてはめて中身を聞いていくと、スキルが身に付いたり、意識が変わったり、すごい内容だと驚きました。こんなに濃い研修はほかにないので、「絶対にやりたいです」と答えましたし、ほかのメンバーからの期待も非常に高かったです。

    後藤さま
    メンバーの熱意に背中を押されて、社内の関係者一人ひとりを説得して回りました。

  • ―具体的にチームではどのようなテーマを扱ったのですか。

    土倉さま
    テーマは、例えば海外事業、組織開発、差別化戦略などです。実際の当社の事業や経営上の課題と結び付けて事務局と講師でテーマを設定し、チーム分けも行います。受講者には事前課題として、自分なりに考える事業課題を一定の文字数でまとめてきてもらい、その内容に基づいてチームを決めていきます。チームでそのテーマに6カ月かけて取り組み、最後は経営陣に発表します。

    今、2期まで終わったところですが、最終発表会はとても内容が濃く、受講者のみなさんが半年間このテーマに向き合い、すごく頑張ってやりきったのだということが受け手にも伝わるものでした。

    後藤さま
    そうですね。経営塾は反対意見もあるなか、説得を重ねることで実施にこぎつけましたが、経営陣への最終発表で、社内の「納得」が得られた実感がありました。内容の濃さ、レベルなどすごくよかったです。

    女性が事業のことを語り、数字を使って論理的に話し、さらに「リーダーシップをとりたい」と堂々と言う。しかもそれが経営者に届く機会となるとなかなかありません。この経営塾によって、当社の女性のたくましさをその場にいたみんなに広められたことは、会社にとってもプラスになったと思います。実際、1期生から管理職になる人も出ていますし、今後も管理職に限らずいろいろな形で活躍実績を積み上げていきたいです。

  • ―受講をしている6カ月の間でも、目に見えて変わっていきますか。

    後藤さま
    変わりますね。まず会社のことを知り始めます。普段は目の前の自分の業務で手いっぱいですが、会社視点で自分の業務を捉えるようになり、「自分の業務が会社とつながっていることがわかった」という声もアンケートにありました。チームで発表内容を詰めていく過程では、例えば生産の人が営業の人に話を聞いたり、外部の人に話を聞いたりしますし、そもそもチーム自体もなるべく部署が重ならないように編成しているので、自然と人脈も広がります。

    リーダーシップについても、それまでは考えたこともなかったという人も初めて自分ごととして考えるようになり、最後のリーダーシップ宣言では、もう顔つきも違いますよね。

    土倉さま
    はい。本当に。リーダーシップ宣言は、半年間の受講を通して「自分がどうなりたいか」というキャリアを描き、それを宣言する場です。一人ひとりカメラに向かって話してもらうのですが、本当にそれが堂々としているのです。

    最終発表会には、直属の上司にもオンラインで参加してもらいますが、事後にアンケートをとると、半年前とは変わった、何かを得たことが伝わったといったコメントが並びます。ほかにも「今後、一緒に仕事をしたいと思わせてくれるような人ばかりでした」といった声もありました。

  • ―1期生のその後はどのような様子ですか。

    土倉さま
    先日、1期生の人たちを対象に1年後のフォローアップ研修を実施しました。当時のリーダーシップ宣言を振り返って、できたこととできなかったことを整理するところから始まりました。できなかったことをグループ内で共有して、解決策をディスカッションするのですが、積極的に意見交換をしていた様子が印象的でした。実際の仕事ではいろいろな壁や障害にぶつかるので、宣言通りにできないことも多くあります。それを1年後に集まって話すことで、乗り越えるきっかけみたいなものが見えてきたと思います。

    フォローアップ研修も小早川先生に担当いただいたのですが、先生のお話に「そういう考え方があるんだ」、「視点の持っていき方を変えないといけないな」などと思う場面も多くありました。理想論だけでは解決しない、現実も見て考えないといけないということをみなさんとても感じていて、改めて小早川先生の言葉が胸に刺さったようです。

    後藤さま
    1期生は約30人でしたが、数人が管理職になっています。ほかには女性同士のネットワークが強まって、仕事がやりやすくなった、相談しやすくなったという声も多く届いています。

    土倉さま
    みなさん、拠点が離れているのでなかなか集まれないのですが、経営塾受講当時のコミュニティを使いメッセージを送りあったり、食事に行ったりとよい関係が続いています。女性が自分の将来を描くという点でも、ネットワークは大事です。経営塾でできたネットワークを業務に生かしたり、普段から励まし合ったりできるように、持続的なものにするお手伝いを今後できたらと思っています。

  • ―経営塾が果たした役割、今後やりたいことなどを教えてください。

    後藤さま
    今回の経営塾はみんなの意識をガラッと変える効果があったと思います。受講者だけでなく、各チームの最終発表を聞いた役員の意識も変わりました。役員も上司も女性への期待値が上がり、特に上司にあたる人たちは、今後意識的にどう教育をしていったらいいかと考えるきっかけになったと思います。女性に活躍を期待することが、ごく普通のこととして根付き始めていることを願っています。

    ただし、いずれはこのような機会提供は終わると考えています。当社のほかの研修は、自律的な成長を促すという考え方がベースになっており、自分で必要なものを選んで受講します。あと数年は経営塾が必要だと思いますが、将来的にはこの考え方に沿ってラインアップの一つとなっていくことが理想です。

    振り返ると、それこそ最初は女性のための育児支援、地域限定制度職の導入、カムバック制度などの両立支援制度を整えて、続くこの経営塾は、女性が事業にどう貢献していくかというより具体的なテーマに移ってきました。女性は「自信がない」と思い込みでキャリアを諦めるのではなく、自分に必要な機会を選択し、自分らしく堂々と職場でリーダーシップを発揮してほしいと思います。一方で、男性にもきちんと両立してほしいので、今後はその両輪で進めていきたいです。

  • ―最後にワークシフト研究所の研修の導入を考えてる他社さんへのメッセージをお願いします。

    土倉さま
    ワークシフト研究所には「漠然とこういう課題がある」「このようなストーリーを取り入れたい」と伝えると、そこから会話をしていく中で要望にマッチするプログラムを提案してもらえます。豊富な他社事例もあり、多くの引き出しを持っているので、安心して相談するといいと思います。

    後藤さま
    「こういうプログラムがあります」ではなく、「何にお困りですか」から始まる点が、ほかとの違いだと思います。

    新しい研修企画や教育体制を考えるときは、社内でどう合意形成を取るかみなさん悩むと思います。新しいものをつくるときは熱量が必要ですが、まず小早川先生はその熱量に共感してくれて、「こういうアプローチの仕方がある」、「ここはこういう解決をするといい」と、プログラムの中身だけではなく、その持って行き方まで相談にのってくれました。非常にありがたいですし、そこも含めて一緒につくってきたプログラムでした。

    ―みなさんの熱量が伝わってきました。これからもご一緒させていただければと思います。ありがとうございました。


    取材・ライター:山田雅子

  • インタビュー後記

    経営塾プログラムを2年連続で採用いただき、誠にありがとうございます。
    6カ月という長期間、かつ役員発表まで持って行くというタフなプログラムを事務局として忍耐強く支えてくださり、講師としても大変心強かったです。
    テーマの1つであります「ビジネスの面白さを体感する」は、なかなか数値には表せないものですがまさに皆さんに持ち帰っていただきたいと感じている部分です。今後とも、3期生、4期生と伴走できれば幸いです。
    取材にご対応いただいた後藤さま、土倉さま、ありがとうございました。(小早川優子)