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株式会社ワークシフト研究所

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2020/5/4

コラム

【コラム】在宅勤務の管理tips:その②職場の管理編

ワークシフト研究所
所長 国保祥子

育休プチMBA®代表、静岡県立大学准教授の国保です。

在宅勤務の管理について、その①職場の制度編の次に会社や組織が、留意するべきことやコミュニケーションについて解説します。
この部分は最も「これまでの延長」としては捉えられないところであり、もし現状で「環境は整っているのに在宅勤務がうまくいかない」と感じている場合、おそらくここに原因があると考えられます。ここではコミュニティ*の皆さんが管理者として配慮していること、部下として配慮してもらえると助かることをあげてもらい、組織マネジメントの視点でその意図や効果をまとめています。

②会社やチームが留意するべきソフト面(意識やコミュニケーション)

まず前提として、在宅勤務はジョブ型の管理である必要があります。日本企業はメンバーシップ型の管理をしている職場が多いのですが、メンバーシップ型で在宅勤務を管理しようとすると放置か束縛かになる傾向があり、組織としてのパフォーマンスが出しにくくなります。
在宅勤務によって部下が怠けるのではないかという心配をする管理職がいますが、出すべき成果を明示化し、業務遂行上の裁量権を与え、十分なコミュニケーションをすれば、細かく労働時間を管理しなくても普通の人はさぼりません。

むしろ研究では、労働時間の柔軟化(例えば在宅勤務)は労働時間の長期化につながるという結果が出ていますので、怠慢よりも働き過ぎを心配したほうがよいのです。なお必要な条件が揃っても手を抜く人というのは、もともとオフィス勤務でも手を抜いていたのだと思われます。在宅勤務でもパフォーマンスが出る体制を確立することができれば通常時でも柔軟で効率的な職場の運営が可能になりますので、そのための知恵を蓄える時期と捉えていただくとよいのではないかと思います。

業務管理

  • チームとしての目標やゴールを定義し、それを達成する上での各自の役割を明確に伝え、チーム内で共有する。プロセスではなく、パフォーマンスや結果を管理し評価する。成果の定義や、目標設定が定量化できていることで、労働時間ではなく成果で人を評価できるようになる。但し必ずしも最初からうまくはできないので、定期的に見直して改善する。
  • 業務の相互依存性や複雑性は分業の難易度があげるため、可能であれば調整する。これまで周りの人の様子を眺めたり、雑談をしたりという方法でなんとなく共有できていたことができなくなるため、タスクを明示的に言語化して伝える、丁寧に確認するという管理が必要になる。
  • オンラインで会議を効率的に行うためには、議題を整理したり、簡単な打ち合わせをしたりと事前準備を丁寧にする。また会議中は、表情が見えないと聞いているのか、伝わっているのかと発言者が不安に感じることもあるため、お互い顔が見える方がコミュニケーションは図りやすい。顔を見ることで体調不良者を早期に発見するという効果もある。慣れてくれば音声だけでもよいが、音声品質が悪くなり参加者全員がしっかり聞き取れていない場合があるので、会議後には議事録やタスクをまとめたテキストを共有する。
  • 在宅勤務を時間で管理する場合は、業務開始時と終了時にメールやslack、Zoom朝礼や日報で連絡する。ただし上述のとおり、厳密な時間管理は弊害も多いため、主に働き過ぎを防ぐための労働時間数管理と、業務の可視化に重点を置いた運用が望ましい。例えば業務開始時に作業内容をチームに伝達することで作業の抜け漏れや重複を防いだり、就業時の日報によって個人のリフレクションを促したり、ノウハウの伝達機会として利用するのであれば、単なる時間管理以上の効果がある。

組織管理

  • 在宅勤務やオンライン化によって最も損なわれるのは、コーヒーを飲みながらのちょっとした雑談や、仕事に直結しない同僚とのやりとりといった業務には直結しないものの組織の土台となる信頼関係やソーシャルキャピタルを蓄積する機会である。現在はこれまでに蓄積した分を消耗している段階であり、いずれ枯渇するため、蓄積するための手段を持つ必要がある。
  • 目的別にコミュニケーションチャネルを用意し、ルール化する。口頭で話したほうが誤解を招かないような場合は電話、情報をしっかり残したい場合はメール、ちょっとした確認や雑談にはチャット、等。明文化した定期コミュニケーションと、各自の状況に合わせた緩い運用のコミュニケーションのバランスを意識する。
  • 在宅勤務で特に重要なのは、顔を合わせていれば自然に発生する「わざわざ電話をするほどでも無いけれど、業務を行う上では必要なちょっとした確認事項」を扱いやすいしくみを構築することである。チャット、定期ミーティング、気軽にかけられる電話など。なんとなく気になる、という程度のものを深掘りすると大きなトラブルの種があるということは珍しくない。
  • 雑談のようなコミュニケーションにはチャット(プライベートおよびグループ)が使いやすい。話の脱線があったり、ギャグがあったりと、雑談をすることで人となりが分かることで信頼関係を醸成する土台となる。ただ一般的に、立場が下の人から目上の方にはチャットメッセージを送りにくいため、あえて上位者からチャットや雑談を送信することで部下が送りやすくなる。雑談は慣れないITツールの練習の場としても有効である。
  • 在宅勤務に慣れていない人、向いていない人には、細やかな働きかけや動機付けが必要となる。例えば、出退勤の連絡、その日の全タスクを可視化、進捗をアップして共有することをルール化する等。これらは普段から自律的に働いている人にとっては大きな負担ではなく、急にこどもの病気で休む可能性のあるワーキングマザーや時短者ではコロナ前から実施していた人も多い。ただそうではない人にとってはこうした可視化のための作業は負担が大きく、場合によっては生産性が低いことが露呈するために嫌がりやすい。そうした場合は、上位者からのレスポンスは早くする、毎日(なるべく朝イチで)WEB会議をして顔を見て話す時間を持つ、上位者が率先して雑談をする(おやつとか昼ごはんの話題や写真など)といった工夫をする。
  • チームメンバーが互いに助け合える仕組みと文化があることで、チームのパフォーマンスがあがったり、業務の属人化を避けたりすることができる。そのためにも、フォローした人をちゃんと評価する。特に緊急事態宣言下でも出勤しなくてはならない業務と在宅勤務が混在している場合は、不公平感を埋める工夫が必要になる。また平素から会社の価値観や企業理念を共有していないと、有事での業務に前向きに取り組んだり、組織への貢献意欲を引き出したりがしにくくなる。

上司から部下へのコミュニケーション

  • オンラインでは発言のニュアンスより内容そのものの影響がより大きくなるため、論理的に話す必要がある。職場でときどき行われる相手に行間を汲み取ってもらうことを前提としたハイコンテクストなコミュニケーション(「あんな感じで適当によろしく」のような)は、情報量が少なくなるオンラインではコミュニケーションエラーを起こしやすい。一つの指針として、英語にできない文章は伝わらないと考えるとよい。
  • 上司のITスキルが低いと、上司から部下へのコミュニケーションや打ち合わせが減ったり、その結果、上位者だけで意思決定がなされて担当者に伝わっていなかったりという現象が発生することがある。オンラインのスケジューラーに不慣れな人がスケジューラーを更新していないことで、設定した会議等の再調整が発生することもある。上位職位が新しいツールを使わないことによって組織のパフォーマンスがあがらないという事態は避けましょう。
  • 一対一で業務やプライベートなどなんでも話せる時間を持つことで、上司と部下の信頼関係を醸成する。「この時間帯は家族のケアや犬の散歩で仕事ができない」なども含めて、各自の状況を共有し理解し合う。「仕事人」と「家庭人」を分けて「仕事人」だけを管理するのではなく、両方の側面があることを前提としてメンバーを管理する。メンバーの個別の状況と意向を把握することで、不要なストレスや遠慮を回避することにも繋がる。
  • LINEなどで部下の様子を聞いたりこちらの様子を話したりすると、部下は「気にかけてもらっている」という気持ちになりモチベーションがあがる。元気がない人がいれば、一対一のWEB会議や電話をしてみるなど、より能動的な働きかけを行う。但し「これどうなってますか」のような質問型コミュニケーションは、顔が見えない、その人となりが分からない状況では詰問しているようにも聞こえるため、表現に注意する。

なお通常の在宅勤務では、こどもが在宅していることは想定されていません。
現状の緊急事態宣言下でこどもが休校中の在宅勤務の場合は、いかに意欲があろうと時間管理が難しかったり、会社の都合にあわせると非効率だったりということが多くあります。そのため労働時間の管理はなるべく緩くして、出すべき成果のみで管理をするジョブ型の管理のほうがパフォーマンスがより上がりやすいと思われます。
こどもの相手をしながらの在宅勤務の難しさは、「少子化対策と労働力不足(特に女性活躍)への対策は保育・教育インフラの充実とセットで考えなくてはならない」という以前から指摘されている点でもあり、今まさに実感しているご家庭が多いことと思います。
しかし困難な条件下でも業務を全うしようと努力する人というのは、強い責任感や高いコミットメントを持つ人だということでもあります。通常期の在宅勤務では、きっと高いパフォーマンスで組織に貢献してくれることでしょう。

*「勉強会参加者限定コミュニティ」は、育休プチMBA®、WSIプチMBA、その他㈱ワークシフト研究所の勉強会・セミナーに参加された方のみが参加できるFacebook上の限定コミュニティです。セミナーに関する講師陣への質問はもちろん、参加者同士が働き方や子育てなどに関する情報を交換しています。

次回は「その③自宅の整備、その④個人の意識」です。

 


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在宅勤務の管理tips:その①職場の制度編
在宅勤務の管理tips:その③自宅の整備、その④個人の意識

※ 「在宅勤務の管理tips」は、国保が職場における人や組織を研究する経営学者として、育休プチMBA等の勉強会参加者コミュニティで在宅勤務をうまくまわすための知恵を募り、取りまとめ、経営学の知見を元に整理したものです。経営者・人事担当者、そして様々な立場・状況で働く方の働きやすさ、生産性向上にお役立ていただければ幸いです。


会社やチームが留意するべきソフト面(意識やコミュニケーション)、④個人の意識については、ワークシフト・メソッドによる研修で「意識変革」から「行動変容」につなげることが可能です。
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