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2025/12/26

コラム

【コラム】「女性社員が管理職になりたがらないんです」 構造的な課題と解決策 Vol.2

ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川優子

小早川 優子

ワークシフト研究所 代表取締役社長

「女性社員が管理職になりたがらない」背景には自信の低下や無意識のジェンダーバイアスがある。職場に潜む構造的な壁をデータと現場の声から解明し、意欲やモチベーションを削がない環境づくりのヒントを探るコラム第2回。

弊社では、子どもを持ちながらもキャリアを諦めたくない、職場でもチャレンジして成長し続けたい女性が集まるコミュニティを運営しており、4,000名以上が在籍している。皆、高額なプログラムを個人で受講する意欲やモチベーションの高い女性達である。主に最終学歴が旧帝大を含む国立大学、有名私大卒が多く、学士が74%、修士以上(複数の修士保持者や博士含む)が25%と、優秀で将来管理職やリーダーを嘱望された女性達の声が集まる場となっている。

2018年に行った弊社の調査[1]でも、女性の管理職に対する意欲の低下は「自信の低下」であることがわかっている。職場でマイノリティであること、両立ができるかどうか不安であること、これまではスーパーウーマンのような女性しか昇進していないこと、そしてそのような女性と比較されること、といった理由から、女性の劣等感が必要以上に刺激され、自分を過小評価し、管理職に対する自信とモチベーションをなくしていることがわかっている。

女性の自信を奪うジェンダーバイアスの数々

自信をなくす要因として、職場に蔓延するジェンダーバイアスがある。代表的なジェンダーバイアスとして、女性のみに雑務を頼むこと、期待される要件やもらえるアドバイスが男性と女性とで違うこと、そして、女性へのアドバイスが会社が求めるリーダー像とズレていること、などがあげられる。

日常的にこのようなバイアスにさらされることで、女性は職場で何を期待されているのかが分からなくなる。相手の期待に沿うスキルは認知的共感力のひとつであり、男性より女性の方が強いと言われている。真面目な女性ほど期待に答えようとするあまり、求められる女性らしさと男性らしさを内包するリーダー像との乖離に混乱する。男性と異なる期待やメッセージを受け取ることで混乱し、自信をなくしていく。

職場で発生するバイアスは他にもある。例えば、チャレンジングなポジションが1席空いていた場合、男性部下が推薦されることが多い。これまで男性が推薦されてきたので男性にした方が良い、と前例に倣うのが正しいと思うこともバイアスのひとつである。

また、男性は、自分より年少の男性に対してはあえて挑戦させるが、女性に対しては挑戦させるより守りたい気持ちが強くなるバイアスも存在する。これらのバイアスによって、上司が気づかないうちに女性の「挑戦機会」「学習機会」「成長機会」を奪っている場合も多い。このようなバイアスが重なって、機会に恵まれた男性に比べると、年次を重ねる度に男女にスキルの差がつき、女性の自信が削がれ、リーダーとして期待されていないと認識し、管理職に対する意欲が失われていく。

報告書でも女性は男性と比較して、自分は組織に期待されている、リーダーシップを求められている、とは感じていない結果が出ており、女性の管理職志望割合に影響を与えていることがみてとれる。

他にも女性の管理職に対する自信の欠如や減退には、現時点の女性管理職は男性管理職より残業時間が長いことが多く[2]、先輩女性のような働き方であれば管理職を避けたいと考える、また女性管理職は圧倒的にマイノリティとなることで組織に対して不信感を抱きやすくなる[3]、ということも原因にあるであろう。

したがって、管理職に対する女性の意欲やモチベーションを減退させているのは、女性個々人の意識や女性という性別に特有の問題なのではなく、上司や同僚が発する何気ない言葉や無邪気な発言に潜む性別役割分業的思考、または会社内で長期に渡って培われたジェンダーに囚われた思い込み、マイノリティ故に発生する構造上のバイアスであるといえる。

また、女性本人も、例えば、家事育児を完璧にこなす専業主婦の自身の母親が身近なロールモデルの場合、自身のもつ無意識のジェンダーバイアスや社会からの良い母親像に囚われて、意識しなければ、もしくは例え意識していても、家庭も仕事も全方向に完璧であろうと板挟みになることも多い。

これらの思い込みが予言の自己成就となり、女性がキャリアアップを望まなくなる、ということはいたって自然な流れであると言える。[4]

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[1] 株式会社ワークシフト研究所 2018年 働く女性の管理職に対する意識調査
[2] 「働き方の男女不平等 理論と実証分析」山口一男
[3] 「影響力の武器」ロバート・B・チャルディーニ
[4] 「ステレオタイプの科学」クロード・スティール

※本コラムは、2020年9月23日に掲載した記事をもとに、最新の状況や知見を踏まえて再構成・加筆修正したものです。

◆関連コラム
「女性社員が管理職になりたがらないんです」の構造的な課題と解決策 Vol.3につづく。Vol.1はこちら。

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