2025/10/24
コラム
女性リーダー育成に「女性だけの研修」が必要な理由
ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川優子
女性管理職比率の向上が社会的な課題となる中で、「男女一緒に学ぶ研修」と「女性だけの研修」のどちらを実施すべきかは、多くの企業が悩むテーマです。当事者である女性社員からも「女性のみの研修」に前向きでない人もいます。特に若手の女性社員は「女性のみ」を対象とした研修に違和感を覚える人も多くいます(これはジェンダーに関する別の課題が潜在化しているのですが、当件に関する裏付けは別の機会にご説明いたします)。
ワークシフト研究所では、特にリーダー育成においては女性のみを対象とした研修の必要性をお伝えしています。
その背景には、数々の研究が示す「性別構成による発言量や自信の偏り」という科学的根拠があります。
1. 男女混合研修で起こる発言の偏り
Hardt, Mayer, & Rincke (2025) の研究によれば、グループの性別構成は参加者の発言行動に大きな影響を及ぼします。具体的には、
- 男性比率が高いグループでは、男性の発言量が増える一方で、女性の発言量は顕著に減少した。
- 女性比率が高いグループでは、女性の発言機会が増え、意思決定過程への影響力も高まった。
つまり、男女が混在する場では、女性が自らの意見を十分に表明できない状況が生まれやすいのです。これは、リーダーシップ育成において致命的な制約となります。
2. 男女混合研修による「自信低下のリスク」
さらに、教育心理学や組織行動の研究からは、男女が一緒に学ぶ場面で女性が抱えやすい「自信低下のリスク」も複数の研究で指摘されています。例えば、Kanter(1977)によれば、女性は、女性が少数派である環境下では「代表として評価される」プレッシャーを受けやすく、その結果、挑戦的な発言を控える傾向があることが分かっています。
リーダー候補が本来の力を発揮できない環境で研修を行っても、育成効果は限定的になってしまいます。
3. 女性だけの研修で得られる効果
一方で、女性のみの研修には以下のようなメリットがあります。
- 安心して意見を言える場が確保され、発言やアウトプットの量が増える。
- 他の女性リーダー候補と挑戦や悩みを共有することで、共感とロールモデル効果が生まれる。
- 実践を前提としたディスカッションを行うことで、意思決定力・発信力の強化につながる。
研修環境による効果の違いを図解してみます。

(図:研修環境による効果の違い)
企業への提言
女性リーダー育成を本気で進めたい企業にとって重要なのは、「女性が安心して挑戦できる学びの場」を設計することです。男女混合の場では得られにくい効果を、女性に限定した研修で最大化することができます。
ワークシフト研究所が提供する女性管理職・次世代リーダー向けの研修では、ケースメソッドを活用することで、女性が自ら考え、発言し、意思決定をトレーニングできる環境を整えています。女性だけの場だからこそ、参加者は臆することなくアウトプットし、リーダーとしての自信を高めることが可能です。
参考文献
- Hardt, D., Mayer, L., & Rincke, J. (2025). Who does the talking here? The impact of gender composition on team interactions. Management Science, 71(5), 4131-4152.
- Kanter, R. M. (1977). Men and women of the corporation. New York, 209.







