男性育休が組織を強くする(後編)

男性育休が組織を強くする(前編)に続き、「男性育休者」がダイバーシティとイノベーションの鍵となることについて更に言及します。


ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川

男性の育児休業が認められない、育児との両立が実現できない組織が、介護との両立を実現できる組織にはなりません。
実現しない、ということは、会社の重要な人材である40代、50代のシニアマネージャー、近い将来企業を導くリーダー層の離脱の可能性を高めるだけでなく、彼らの能力を十分に発揮させられないことで、組織全体の生産性が低下する可能性が高まることを意味します。

日本の人口ピラミッドを見れば、小さな子供の数より今後介護を必要とする年配者の数が多いことがわかります。これは育児をする人の数より介護をする人の数の方が多くなる可能性を示唆しています。介護は育児より長期間に渡ってケアが必要になることも多々あります。

つまり、管理職の介護離職、介護休業、介護との両立は必ず直面する課題であり、育児との両立より大きなインパクトを与えるものとなるのです。

ですから、男性の育児休業の実現がもたらすメリットの大きさは明確です。男性の育児休業が「当たり前」となる職場は、組織全体の働き方改革が実現し、介護をしながら管理職として働く、また介護でなくともプライベートと両立する優秀な人材を確保し続け、育児休業から復帰した女性のキャリアに対する意欲を高めます。これまでなかなか進まなかった「ダイバーシティ」「女性活躍」「働き方改革」を一気に解決へと導く可能性を「男性社員の育休の実現」は持っているのです。

さらに、男性の育児休業には別の副産物もあります。

昨今、副業を解禁する企業が増えてきました。この背景には、社員の視野を広げる、客観性を持たせる、新しい発想を促すなど、 「VUCA(ブーカ)」[1]と言われる「不確実性の高く絶対の正解が存在しない社会」に必要なスキルが磨かれるからです。

一方で、企業における副業解禁に関しては、いくつか問題点も浮上しています。時に副業を優先してしまって本業がおろそかにする、副業がうまくいった優秀な人材が離職する、マルチ商法に手を出してしまって会社で営業をしてしまう、というケースが実際に起きています。そのため、企業も先手を打って、副業規定を厳しくしていますが、厳しすぎて副業できる仕事がなく機能していない側面もあります。

副業のメリットである、社員の視野を広げ、客観性を獲得し、新しい発想に繋げるスキルの獲得は、育児休業でも十分に可能であると思います。

特に男性社員の多くは「言葉の通じない」赤ちゃんと対峙することで、今まで自分がいた世界が広がり、自分の環境を見直すきっかけになるでしょう。言葉は通じないのに、確実に要求をしてくる相手に、あの手この手で泣き止んでもらう、そのような体験を通じて、営業やクレーム処理に関してもこれまでと違う視点を得られることになるかもしれません。

出産という大仕事(まさに身体にとっては大事故にあったような出来事)を終えた妻を見て、また産後にメンタルが不安定な妻を相手にすることも、女性への理解を深め、将来、優秀な女性部下を育成するためのスキルアップの機会となるでしょう。

新しい発想にも有効でしょう。
想像を超える環境に身を置くことで、今までにない考えや着眼点も出てくると思います。子供を持つ家庭に対する新しいサービスを生み出す発想力、バリアフリーに関する視点なども鍛えられる機会にもなります。

実際に育児休業を取った男性は、復職後に女性部下とのチーム作りに非常にプラスになった、子供の将来を考えることで自然とSDGs( 持続可能な開発目標 )[2]の視点が鍛えられた、自社の商品を親の視点を入れることによって新しいサービスに繋がった、など、多くのメリットを体験していることが伺えます。

今、企業に必要なイノベーティブな視点も、育児休業を取得することで獲得できる可能性もあるのです。

男性育児休業をどう活かすか、は今後の日本の企業戦略の鍵になると我々は確信しています。

男性の育児休業が当然となる組織は、ダイバーシティ、女性活躍、働き方改革、そしてイノベーションが実現される組織となる可能性を多分に秘めています。これまでなかなか目に見えて効果が出ていなかったダイバーシティ、女性活躍、働き方改革ですが、男性の育児休業の実現が強力なトリガーとなり、加速し前進していくことは間違いありません。


[1] VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から取った言葉で、元は軍事領域で使われていた用語。現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われている。

[2] 持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。SDGsは、各企業がそれぞれの本業を通じて目標達成に取り組むことが重要であると示唆し、目標達成に寄与する投資やイノベーション創出といった点で、企業に対する期待が大きい。

<株式会社ワークシフト研究所とは>
優秀な女性社員が活躍できる組織とは、当事者の女性だけでなく、すべての社員の能力が発揮できる組織であり、それは、生産性が高く、イノベーションを生み出す組織となります。ワークシフト研究所は、実践的なケースディスカッションを軸とした ワークシフト・メソッドを用い 、女性管理職・リーダーの育成、企業の働き方改革を目的とした各種コンサルティング、教育トレーニングサービス(法人向け・個人向け)、管理職・リーダー候補の女性の人材紹介サービスを提供しています。

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