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2025/11/7

開催報告

開催報告 PeerCross 堀元×国保祥子「ライフイベント前から始めるキャリア支援とは?」

女性活躍推進の勘所:ライフイベント前から始める戦略的キャリア育成

 

はじめに

女性活躍推進、女性リーダーや女性管理職の育成において、多くの企業が「育休後の支援」に注目しています。これに加えて、ライフイベント前からの戦略的な育成も重要です。

本コラムでは、2025年9月16日に実施した「ライフイベント前から始めるキャリア支援とは? 〜ワークシフト研究所・国保によるミニ講演&PeerCross・堀元×国保のトークイベント〜」から、効果的な女性活躍推進の新しいアプローチを内容を再構成してご紹介します。

※ PeerCrossについてはこちらもご覧ください。

深刻化する「チャイルドペナルティ」の実態

46%の賃金下落という現実

東京大学、山口慎太郎先生らの研究によると、第一子の誕生により女性の賃金が46%下落するという衝撃的なデータが明らかになっています。この主な原因は時短勤務による労働時間の減少ではなく、昇進機会の減少にあります。労働時間が減ることで昇進機会が失われ、結果的に昇進しない、昇給もしないという悪循環が生まれているのです。

若い世代に広がる「諦めモード」

さらに深刻な問題は、大学生世代の女性たちの意識です。理想では「両立したい」と考える女性が最多である一方、現実的な予想では「非婚就業」が最多となる大きな乖離が生まれています。

(「ライフイベント前から始めるキャリア支援とは?」株式会社ワークシフト研究所 所長 国保祥子の講演から)

若い世代は既に「子供を持ったらキャリアとの両立は無理」であると諦めており、「自分は仕事を頑張りたいから子どもは持たないでおこう」「こどもがほしいから仕事はほどほどにするしかない」と考える女性が増えています。これは社会全体で若い人たちに希望を持たせられない状況を作ってしまっているということです。

女性のキャリア志向は「環境次第」

研究では、女性のキャリア選択における興味深い事実が明らかになっています。女性のうち、環境に関係なく仕事を志向する層は約2割、同じく家庭を志向する層は約2割いるのですが、6割は「環境次第」で仕事志向にも家庭志向にもなりえます。

この6割の女性が無理なく仕事を続けられるような環境を作ることが、企業の女性活躍推進施策として最も効果的なアプローチとなります。

「両立支援」だけでは不十分な理由

マミートラックの罠

多くの企業が時短勤務や育休制度などの「両立支援」を充実させていますが、それだけでは女性の活躍につながりません。両立はできても昇進の機会が限定される「マミートラック」に乗ってしまい、結果的にキャリアが停滞してしまうのです。

必要なのは「両立支援」×「活躍支援」

真の女性活躍には、両立支援と活躍支援の両方が必要です。具体的には、両立しながらも能力開発機会やチャレンジ経験を積める環境づくりが重要となります。

戦略的育成の3つのポイント

1. ライフイベント前からの能力開発

結婚や出産前の段階から、女性社員に対して積極的にチャレンジとなる経験を提供しましょう。ルーティンワークではなく、経験がない業務や挑戦的な業務を任せることが自己効力感(自信)につながります。

2. 「環境次第層」への戦略的アプローチ

女性の約6割は「環境次第」で仕事志向にも家庭志向にもなり得ます。この層に対する制度や環境整備により、企業は活躍人材を大幅に増やすことができます。

3. 復職支援プログラムや研修の活用

育休中の復職支援プログラムや研修には明確な効果があります。参加者は復帰後の不安が減少し、両立への自信が向上し、実際に復職6ヶ月後の活躍度が高くなることが確認されています。

「ゲームのHP理論」で理解する心理的資源

復職後の不安が減ると実際に活躍できるという現象は「資源保存理論」で説明できます。ゲームのHP(ヒットポイント。プレイヤーの生命力や生存力を数値化したもの)に例えると、十分なHPがあると「もう少し攻撃しに出よう」「リスクを取りに行こう」という気持ちになります。復職支援プログラムによって両立効力感を高めた人は、HPが高い状態で復職できるため、自分の仕事をこなすだけでなく周りの人を助けたりと、さらにHPを獲得するための行動に出ることができます。一方、HPが少ない状態で復帰すると「いかに減らさないか」という守りの思考になってしまいます。

成功する女性が実践していること

復職支援プログラムに参加した人の追跡調査で、昇進している女性たちの共通点を分析すると、以下の特徴が見えてきました。

 積極的な働きかけ

  • 家族に対して「仕事が好き」「頑張りたい」という意思を明確に伝える。
  • 職場でも自分のキャリア志向を積極的に発信する。
  • 周囲の支援を得るために能動的に行動する。

人事・経営層への提言

今すぐできる3つのアクション

  • チャレンジ経験の意図的な提供
    • ルーティンワークではなく、経験がない非定型業務をキャリアの早い段階で女性社員にも積極的に任せる。
    • 失敗する可能性を含む、これまでにやったことがない挑戦的な業務を任せたり、充実感や達成感を持てる業務設計にする。
  • 復職支援プログラムや研修の導入・充実
    • 育休中の復職支援プログラムや研修(例えば、育休プチMBA等)の実施。
    • 自己効力感(両立できるという自信)を高める内容に重点を置く。
  • 周囲への働きかけを促進する環境づくり
    • 女性社員の「仕事が好き」「不安はあるけど頑張りたい」という気持ちを表明しやすい職場環境の整備。

長期的な視点での投資

女性活躍推進は短期的な制度導入では解決しません。ライフイベント前からの継続的な育成投資により、企業は優秀な女性を長期的に活用できるようになります。

まとめ

女性活躍推進の成功には、従来の「育休後支援」に加えて「ライフイベント前からの戦略的育成」も重要です。両立支援と活躍支援を両輪として、女性社員一人ひとりの自己効力感を高める取り組みを通じて、真の女性活躍を実現していきましょう。

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