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2024/7/1

コラム

【コラム】育休プチMBAの動機づけ要因としての効果:ハーズバーグの二要因理論を用いた分析

ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川優子
2024年7月1日 コラム

 

 ここ数年、人事部の方から、「両立のための働き方改革、制度は整えたので育児休業(以下「育休」)からの復職は100%になっている。しかしながら、彼(女)らの意欲が上がらない、どうすべきか」というお悩みを多く聞く。

 人事の方はさまざまな施策を行うも、思うような効果に繋がらず、中には疲弊を通り越して疲労困憊している方も見受けられる。だが、これらの問題は、有名な組織理論でもある「ハーズバーグの二要因理論」で考えると、現在多くの方が抱えているお悩みの解決の糸口が見つかるのではないかと思う。

 「ハーズバーグの二要因理論」とは、フレデリック・ハーズバーグが提唱した動機付け理論で、職場における従業員の満足度とモチベーションを説明している。この理論は、以下の二つの要因から形成されている。

1.衛生要因(Hygiene Factors): 従業員の不満を防ぐ要因。直接的なモチベーションの向上には寄与しないが不足すると不満を感じる原因となるもの。例えば、給与、職場の安全性、勤務条件、間接的な監督、会社のポリシーなど。 

2.動機付け要因(Motivator Factors): 従業員の満足度を向上させ、モチベーションを高める直接的な要因。例えば、仕事の内容、やりがい、達成感、責任、職場での成長など。

 

 この理論のポイントは、衛生要因が不足している場合、当然従業員は不満を感じる、しかしながら、衛生要因が満たされたとしても必ずしも満足感が得られるわけではなく、モチベーションが上がるわけではない、ということである。満足度や意欲を向上させるためには、別の動機付け要因が必要とされ、それらの要因が提供されることによって、従業員はより高い満足感とモチベーションを感じ、その結果、生産性に寄与することに繋がることである。この理論は、従業員のモチベーション管理において重要な指針となることが理解できる。

 育休制度の充実、育休者への会社の理解はこの理論の衛生要因に当たる。つまり、不足すると不満を感じるが、多く満たしたからといって、大抵の場合社員の満足度やモチベーション向上には繋がらない、ということである。

 日本の育休制度は世界のどの国よりも充実している。会社によっては当事者からの意見に寄り添う形で、更に充実させた制度にしている。もちろん、従業員のためを思って行なっているのであろうが、残念ながら、さらなる充実した制度は(国の制度でさえも)決して動機づけ要因とはならず、場合によっては更なる充実を求める声を誘発してしまう結果になっている。この声に応えてばかりいると、組織内は不平等になり社員同士の分断を産むことになる。動機づけ要因にならないことであるから、当然育休から復帰した社員の管理職になるための意欲もほとんど上がらない。

解決策としては、現状の衛生要因重視から動機づけ要因重視にシフトすることである。

そこで、育休プチMBAの特徴を整理し、どう貢献できるか、を考えてみる。


ハーズバーグの二要因理論を用いた育休プチMBAの分析

衛生要因としての効果:

 育休プチMBAでは、職場復帰に際して直面する不安や問題に対する具体的な解決策を提供している。例えば、タイムマネジメントのスキルや効果的なコミュニケーション方法などを学ぶことで、職場でのストレスや不満を軽減する助けとなる。これらは「衛生要因」にあたり、不満の原因を取り除くことに貢献している。

 繰り返しになるが、現在の育休制度は、多くの「衛生要因」をカバーしており、従業員が育児と仕事のバランスをとるための基本的なサポートを提供している。これには休業の権利や、職場復帰時の一定の保護措置が含まれるが、これらの措置だけでは、復職後の社員のモチベーション向上、つまり「動機付け要因」は必ずしも充分には支援されない。

 この点で、育休プチMBAは衛生要因にさらに貢献すると考えられる。育休プチMBAは、復職者が直面する具体的な不安や問題に対する解決策を提供することで、復職後の環境を改善し、仕事と育児の両立をサポートする。たとえば、効果的なコミュニケーション技術、タイムマネジメントのスキル、ストレスマネジメントなどを教育することで、復職後の職場での満足感や心の安定感を高めることができる。これらのスキルは、復職者が職場での課題に対処するための具体的なツールを提供するため、衛生要因の充実に直接貢献すると言える。

動機付け要因としての効果:

 育休プチMBAは、マネジメント思考やリーダーシップのトレーニングを提供しており、これによって参加者は自己実現の機会を得ることができる。自己のスキルとキャリアの可能性を広げることで、仕事への情熱やコミットメントを高める「動機付け要因」を強化し、より充実した職業生活を送ることが可能になる。具体的には以下である。

 

  1. 自己実現の追求

 育休プチMBAのプログラムが提供する様々な学習機会は、参加者が自分自身の能力を認識し、発展させることを可能にし、職場復帰に際して重要な自信と満足感を与える。また、​マネジメントスキルやリーダーシップ能力の向上を通じて、復職者が自己実現の機会を見出す手助けができる。復帰に際する自信や自己実現の追求は「動機付け要因」の大きな要素である。 

  1. 認識力と責任感の向上

 育休プチMBAでは、個々の参加者が実際のビジネスケースを扱いながら、問題解決能力を高めるトレーニングを行う。組織から期待されているアウトプットは何かを認識する力が向上するため、それに伴って責任感も向上する。このことは、社員の満足度を高める核心的な「動機付け要因」となる。このトレーニングは、参加者が実世界の課題に対して効果的な解決策を見つけ出し、結果として職場での影響力を増すことを可能にする。

  1. 成長と進歩の機会

育休プチMBAが提供する学びのコミュニティは、参加者に継続的な成長とキャリアの進歩を促すきっかけとなる。育休プチMBAにおいて、参加者はディスカッションを通じて自らと違う考え方があることに気が付き、互いに学び合う。自らと同じように子育てしながら働く仲間は同志となり、より生産性の高い働き方や、生活に工夫の余地があることを知るのである。それを職場や家庭で実践することで、自身のキャリアパスを拡張し、新たな専門分野での知識と技能を獲得することができる​。ハーズバーグは、個人の成長を促進することが職場でのモチベーションを大きく向上させると説明しており、「動機づけ要因」となる。

 このように、育休プチMBAは復職者のモチベーションを高める「動機付け要因」を充実させることで、復職後の職場での満足度と生産性の向上に寄与している。復職者が直面するキャリアの壁を乗り越え、仕事と育児の両立を成功させるための具体的なツールとインスピレーションを提供することで、彼らの職業生活全体にポジティブな影響をもたらすことができる。

 言い換えると、育休プチMBAは参加者の職場復帰とキャリア継続をサポートすることで、ハーズバーグの理論における両要因を効果的に改善し、職場での満足度とモチベーションの向上に寄与している。

 

 福利厚生は主にこれまで社員の衛生要因を満たすためのものであったが、現在は動機づけ要因を満たすものが求められている。弊社の育休プチMBA福利厚生プランもこのような人事部の方々のお悩みから生まれている。人事部の方々のお悩みを少しでも解決できるよう活動していきたい。

育休プチMBA福利厚生プランのご案内

 

 

 

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