マミートラックに関する実態を明らかにした調査(21世紀職業財団)

ワークシフト研究所 所長コラム 2022年3月

ワークシフト研究所
所長 国保祥子

21世紀職業財団の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」(2022年)の結果が興味深いのでまとめておきます。記述統計ではありますが、マミートラックの実態を明らかにした調査は初めて見た気がします

本調査は、本人・配偶者とも、26歳~40歳、従業員31人以上の企業に勤めている正社員・正職員で、同居している子どもがいる人(子どもの年齢問わず)現在の勤務先に3年以上勤めている男女を対象とした4000超サンプルの調査です。この世代(ミレニアル世代と定義)は家庭科男女共修世代で、男女雇用均等法改正後に就職し、「イクメン」普及後に子育てに突入しているので、比較的ジェンダー観がフラットな環境で育っていると思われます

以下、囲みは概要版からの抜粋で、ページ数は概要版pdf記載のものです。

就業状況の男女の違い

経験を聞く質問ですが、いずれの年齢階層(総合職)においても女性で「一皮むける経験をしたことがない」の割合が高い。例えば26-30歳では男性が17.1%のところ女性は24.7%、31-35歳では男性15.8%で女性が30.8%がそうした経験がないと回答。また、特に男女差が大きいのは、「昇進・昇格による権限の拡大」で、26-30歳では男性が35.4%で女性は18.8%、31-35歳では男性34.0%で女性が20.8%、36-40歳では男性43.6%で女性が25.5%が経験があると回答している。次に差が大きい経験は「部門を横断するような大きな異動」で、26-30歳では男性が29.3%で女性は21.2%、31-35歳では男性28.8%で女性が19.2%と差が大きいが、36-40歳では男性30.8%に対して女性が29.4%と差が小さくなっている。

21世紀職業財団の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」(2022年)概要版pdf p12

一皮むける経験は成長には必須。この男女差からは、女性は20代のころから成長につながるような経験を与えられていないことが分かります。若いうちに成長を実感できる仕事経験がない人が、出産後に両立しながら仕事を頑張ろうという気持ちにはなりにくいのではでないでしょうか。一皮むける経験の影響は後半にもでてきますが、女性は出産前に成長実感や仕事の面白さを知る機会を得られていないとマミートラックにのりやすいという私の仮説が実証された感じです。

 

総合職・無職期間のない人で勤続年数が6~10年では男性の62.1%が「係長・主任及び係長・主任相当職」以上(=管理職)となっているが、女性では26.4%。勤続年数が11年以上になるとさらに男女の職位構成の違いが拡大し、男性の管理職割合は81.8%であるのに対して、女性は37.7%。

同上 概要版pdf p13

目新しくはありませんが、女性の管理職比率はやっぱり低いですね。結婚出産を経て仕事を続けていても、職位差が開いていくのがよく分かります。そして職位差はそのまま所得差に繋がっていきます。組織の中で昇進することが全てではないですが、同期の男性とどんどん差がついていくことを女性はどう感じているんでしょうか。

マミートラックの実態

「難易度や責任の度合いが低く、キャリアの展望もない」=「マミートラック」に該当する女性の割合は、女性全体で46.6%、総合職で約39.0%

女性総合職について、過去における「一皮むける経験」の有無別に見ると、「一皮むける経験」がある人では「マミートラック」にいる人が34.0%、ない人が56.8%。「一皮むける経験」を積んでおくことが大事であることがうかがえる

同上 概要版pdf p19

この調査で一番価値があると思ったデータです。総合職でも39.0%がマミートラックにのっているという事実。最近マミトラの人が多いような、という実感は持っていましたが4割とは。もったいないなあ。そしてやはり「一皮むける経験」がない人がマミートラックには多い。

第一子出産後に仕事に復帰した際に「マミートラック」に入ったと感じかつ現在も「マミートラック」にいると回答した女性は70.0%。他方、第一子出産後に復帰した時に「仕事の難易度や責任の度合いが妊娠・管理出産前とあまり変わらず、キャリアの展望もあった」と回答した女性では、80.1%が現在もそのままキャリア展望を持っている。第一子出産後に仕事に復帰した際、仕事の難易度や責任の度合い、キャリアの展望を低下・縮小させないことが、その後の、女性のキャリア形成には極めて重要。

同上 概要版pdf p20

第一子出産後に仕事に復帰した際に、「しばらくは」ゆるキャリで・・・という人は少なくないですが、その「しばらく」がずっと続いてしまう現象はまさに時短トラップですね。第一子出産後の復帰の仕方が、その後に長く影響するという事実はもっと知られて欲しいです。なお復帰直後にキャリアの展望があり、その後マミートラックにのったらしき人は14.2%、復帰直後は展望がなかったけれどその後展望をもつようになった人は22.1%。あとからのキャリア修正は不可能ではないけど簡単ではないという感じです。

マミートラックを脱出できた理由(複数回答)は、「定時退社だけでなく、必要なときには残業するようにした」が30.1%、「時短をやめてフルタイムで働くようにした」が25.2%、「上司からの働きかけがあった」が24.3%、「上司に要望を伝えた」が23.3%。そのほか「自己啓発した」は13.6%、「異動、社内公募、転職など、働く場を変えた」が7.8%。

同上 概要版pdf p21

上司からの働きかけも重要だけど、まずは女性側から仕事をしたい、できるという意志を周囲に見せることが大事だと感じます。毎日残業は無理しなくとも、繁忙期だけは残業できる体制を整えてチームを支えるとか、週1,2回は夫にお迎えを任せて残業するとか。そうした行動は同僚からのサポートも得やすくなると思います。まだまだ多くはないけど、自己啓発がきっかけになった人もいます。なお「夫に働きかけて、夫の家事・育児分担を増やした」「親族・知人のサポートを増やすことにより家事・育児の負担を減らした」が相対的に低いのは、これらが目的というより、上記を実現するための手段だからだと推測します。

男性の育児・キャリア意識

男性の育児休業取得経験者の半数以上が家事・育児を行うことのメリットとして「仕事の効率化」を挙げている。育児休業取得経験者が被経験者(有休取得&有給非取得)より高くなっているのは、「効率的に仕事を行うようになった」が55.7%、「視野が広がり、これまでと違った発想ができるようになった」32.9%、「仕事に対するモチベーションが向上した」22.5%、「職場の同僚や部下の家庭環境等に充分配慮した対応を取りやすくなった」22.5%。

同上 概要版pdf p23

面白いのは、「こどもや配偶者との関係がよくなった」という家庭へのポジティブ影響は被経験者でも実現しているんですが、仕事の効率化や視野拡大といった仕事へのポジティブな影響は、育休経験者のほうが大きい。企業は有給でごまかすより、きっちり育休を取らせたほうがよいようです。

ソース:21世紀職業財団 子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究(2022年)


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実践的なケースディスカッションを軸とした「ワークシフト・メソッド」を用いた意識変革・組織改革を専門としており、「ビジネス×アカデミア」の交流を促進し、限られた時間の中で最大限の成果と、付加価値を創造する個人と組織を創ります。


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