新型コロナウィルスの影響による、行動制限下での子供のリモート教育について

~ステイホーム期間中における教育機関対応事例の分類と考察~

ワークシフト研究所
研究員 森家明味

2020年3月より順次、新型コロナウィルスによる影響で、学校や学童、幼稚園や保育園、塾や体育教室などの、リアルな場における教育関連システムが停止した。

子育て世帯の状況は複雑である。学校や学童、幼稚園や保育園などに通えなくなった子供がいる中で、働かなければならない。この状況は、親に相当のストレスを与えたのかもしれない。
例えば、子供の相手をしてあげたいという心理と、子供の相手をしてあげられない状況との乖離が、大きなストレスを生む。また、いつものように自由に働きたいのに、子供がいるために自由を制限されて、ストレスを感じる場合もあるだろう。未曽有の危機に直面して、保護者達はこぞって、社会的な教育の場や、預かりの場の機能の偉大さを思い知らされたに違いない。

 さて、子供たちの置かれた状況も複雑であった。突然の「ステイホーム」なのだ。
子供によっては、引きこもり生活に楽しみを見出しただろう。いつも親がそばにいることをうれしいと思う子もいたと思う。親の思いとはよそに、ゲームやYoutubeを思う存分楽しめる状況に、目を輝かせた子供もいたのではないだろうか。
一方で、親が近くにいるのに一緒に遊んでくれなくて寂しい、という率直な意見にうなずく子供たちがいたし、虐待という悲しい出来事を経験した子供たちもいただろう。
家庭教育には正解がない。それゆえに子供たちの置かれる状況は千差万別、まさに複雑な状況となったに違いない。

「ステイホーム」。この状況下においては、家庭や居住地域、所属する教育機関などにより、どうしても教育的なばらつきがでるのは否めない。また、そのばらつき自体が、公教育という観点においては、深い問題となりうることも、再認識されたのではなかろうか。

 国の宝である子供たちを襲った未曽有の危機に対して、様々な教育関係者が動いたことは記憶に新しい。各教育機関は、すぐさま対応に取り組んだ。オンラインで授業を行ったり、即席で動画を作成して配信をした。また、プリントを郵送して楽しい雰囲気を作り出したり、なんとか課題を出して学習させたりと。教育機関や教育サービス業者たちはあの手この手で、ステイホーム期間の対応に邁進したように見える。

 2020年6月の現在では、たくさんの対応事例が見えてきた。本稿では、新型コロナウイルス影響下で教育機関が対応したオンライン教育事例に関して、2軸を用いた分類を行い、整理する。

本稿での事例分類に関する軸を、教育的な観点を鑑み、仮に以下のようにおく。

 第一に集合性という軸である。こと、子供たちは、人と触れ合いながら人間性をはぐくむという点が教育上の大切な要素となる。教育上の観点のひとつ、社会化には、人と人とのかかわりあいから何かを学ぶ、ということが欠かせない。つまり、子供たちが集合し、他者とかかわりながら何かを学ぶということが必要になる。この面を、教育の場における集合性という軸で表そうと思う。
 
 次に、即時的応答性という軸である。近年、教育では、アクティブラーニングの重要性が説かれている。教育とは、ある種のゴールに向けて、人を導く側面がある。子供たちに相対する教師などの指導者が、いかに、子供たちに反応し、アクティブな態度を引き出し、導きうるかどうか、という点が重要になると考えられる。そこで、もう一つの軸は、即時的(リアルタイム)応答性としてみよう。

以下が、上記2軸で、対応事例を分類した図となる。

 いずれも教育機関の対応事例を念頭に置いているため、共通の要素としてなんらかの「知の提供」が包含される。一方で、それぞれの対応の方法により、ある種の教育効果の差が生まれうることが推察される。例えば、集合性が高い方が、多面的な視点の獲得というような、アクティブラーニングに関する副次的な効果が高く出るかもしれない。

さて、ひとつずつ象限をみてみよう。

 第一象限であるが、これは集合性大×即時応答性小。つまり、子供が時間に制約されず、集合しうる対応事例である。たとえばオンデマンド動画を配信して、視聴時間は自由だが、視聴仲間と投稿機能などを使って交流を図るという手法があるだろう。

 次に第二象限であるが、これは集合性大×即時応答性大の手法。子供が集合して教育の場を共有し、指導者が即時に様子を捉えて対応する事例である。例えば、ZOOMを用いたオンライン授業があてはまる。

 第三象限は、集合性小×即時応答性小の手法。子供たちは分散している状態で、場所や時間を自由に設定して課題に臨むという事例である。小学校がプリントを配布して課題に当たらせる事例や、学習塾が学習課題を郵送配布した事例などがあてはまる。ほかにはHPてのテキストコンテンツでの情報提供などだろうか。

 第四象限は、集合性小×即時的応答性大。つまり子供たちがそれぞれ別個に、オンラインで直接教育的指導を受けるというような場合だ。ピアノの指導や個別英会話などの習い事に親和性が高い手法だと考えられる。

 従来の教育をオンラインで踏襲するには、おそらく、集合性が大きく、即時応答性が大きい第二象限に当てはまるような対応が望まれるのだろう。しかし、この象限にあてはまるような授業を、リアルな場での授業の内容を欠損することなく行うには、指導役に大変大きな負荷が生まれることは特筆すべきであろう。指導者に高いファシリテーションスキルが求められるし、一画面ですべての生徒に気を配るという作業は、五感を封じられているためか、リアルタイムで生徒の気配を感じ取ることに比べて、心的負担も大きい。また、指導者のファシリテーションスキルにより、教育効果の差が大きくでてしまうリスクも考える必要がある。

 一つの手法に頼るには、ある種の限界がある。教育機関は、一つの手法にたよらずに、ある程度教育目的を分散して、それぞれの目的に適応した手法を複合的に使って、効果を高くしていくことが求められよう。

 例えば、ZOOMによるオンライン授業は話し合いをたくさん設けて社会化に特化する場とし、知の提供という目的は授業の動画配信とオンライン質問コーナーを併用する。仲間との切磋琢磨は文字ベースのクローズドSNSを用意し、自宅学習用には宿題として課題プリントを配布するなどだろうか。
…少し考えるだけでもとても大変である。しかし、必要だ。

 教育機関は、行動制限下においては、複合的に教育手法を活用し、教育効果を高めるという方向に向かっていくのだろうと推測される。
 
 以上、本稿では、教育機関の対応事例について、4象限で分類し、導入的考察を行った。

 現在、わたしたちは未曽有の危機的状況にさらされ、時代の転換時点にいる。この状況を乗り越えるためには、教育機関だけに負担を強いるのではなく、社会全体で協力しながら、子供の教育を支えていくべきだろう。子供はまさに、国の宝なのだから。

(了)

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