女性の活躍の土壌となるのは「働きやすさ」

ワークシフト所長コラム2019年6月


ワークシフト研究所 
所長 国保祥子

前回のコラム(『なぜ女性は、入社後に昇進意欲を失うのか?』)では、
やりがいが重要だという話を述べました。

また、女性の昇進意欲が入社後に低下しているという事実と、
女性は昇進を希望しない理由として 、
(雇用管理区分の問題を除くと)家庭との両立困難や、ロールモデル不在
など、仕事と直結しない要因を挙げているというデータを紹介しました。

日本では、女性は家庭内ケア責任の主担当であることが多く、家庭との両立ができなくなるという不安を払拭することなしには昇進を望まない傾向があります。そのため働き甲斐とあわせて、両立ができるという実感の持てる働きやすい職場であることも重要な要素です。

母親が育児をするべきであるという伝統的なジェンダー意識を持っていると、女性は自分が働くことで家庭に迷惑をかけてしまうのではないかという不安を抱えがちです。この不安を払拭することが、女性に仕事へのコミットメントを引き出すうえでは非常に重要です。
伝統的なジェンダー意識を持った男性が、自分が家庭に時間を割くことで職場に迷惑をかけてしまうのではないかという不安を感じるのと、同じ構造です。

現在は育児休業制度が整ってきたため、出産を経て就業を継続する率は年々高くなっています。
しかし、長時間労働が慢性化していたり、時間や場所の柔軟性が低かったりする職場の場合、たとえ意欲があっても育児と両立しながら働き続けることは難しいと感じるため、家庭に迷惑をかけたくないと感じている女性は働き続けることにポジティブなイメージを持てず、従って昇進意欲も持てません。

実際、出産後の昇進意欲を調査した研究では、
意欲が低下していないグループでは
「長期的なキャリアがイメージできる」「会社・職場が育児との両立を支援してくれたことに応えたい」と考えている人が多いのに対し、
意欲が低下したグループでは
「仕事と育児の両立について職場や上司の理解が得られない」「残業など長時間働くことが出来ないと評価を得られない」と考えている人が多くなっています [i]

日本企業は、職務内容・勤務地・労働時間に対する「無限定性」を受容することと引き換えに、高い賃金と長期雇用を正社員に提供するという特徴を持っています(筒井,2015)。いろいろと無理を聞いてくれる代わりに、立場を保証しますよという労働者と雇用主との契約です。

この特徴はメリットも多くありますが、キャリア形成が会社主導になり従業員が受け身になりやすい、管理職の管理能力が向上しにくい(低くても問題が発生しないため)というデメリットがあります。
また、無理を聞くことができない人材(育児や介護を抱える人材)が、居場所を失いやすい傾向もあります。

これまで日本の多くの企業では、残業・転勤をはじめとした無理ができる社員を前提とした職場管理や人事管理が行われてきました。
しかし日本は少子高齢化が進むことで、これから人材不足がさらに深刻化していくでしょう。採用現場では、すでに「人が足りない」「若い人が入ってこない」という実感があろうかと思いますが、この傾向は今後さらに強まる一方です。育児中の女性に限らず、無制約で働ける人を前提にした職場の仕組みでは、これからの人材不足かつ超高齢化の時代は人不足に悩まされるでしょう。

そんな時代においては優秀な女性は貴重な資源であり、長く活躍し続けてもらうためには、やりがいと働きやすさが両立する職場づくりが必要なのです。


[i] 矢島洋子(2014) 女性の能力発揮を可能とするワーク・ライフ・バランス支援のあり方. 佐藤・武石編『ワーク・ライフ・バランス支援の課題』 東京大学出版会

<株式会社ワークシフト研究所とは>
優秀な女性社員が活躍できる組織とは、当事者の女性だけでなく、すべての社員の能力が発揮できる組織であり、それは、生産性が高く、イノベーションを生み出す組織となります。ワークシフト研究所は、実践的なケースディスカッションを軸とした ワークシフト・メソッドを用い 、女性管理職・リーダーの育成、企業の働き方改革を目的とした各種コンサルティング、教育トレーニングサービス(法人向け・個人向け)、管理職・リーダー候補の女性の人材紹介サービスを提供しています。

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