職場が女性のやる気を奪う?!

ワークシフト所長コラム2019年4月

ワークシフト研究所 
所長 国保祥子

2014年初夏、私は娘を出産して育児休業期間を過ごしていました。
こどもとひたすら向き合う日々は楽しいものの、復帰後に果たしてこれまで通りに仕事をしていけるのだろうか、育児と両立しながら働くということが自分にできるのだろうかという漠然とした不安を抱えていました。

私は大学を卒業した後、業務変革を扱うコンサルティング業に携わり、その後、慶應ビジネススクールに進学し、修士課程と博士課程で人と組織のマネジメントを専門に学びました。
大学院で学ぶ傍らで、企業の研修講師や調査を手掛けるようにもなりました。文科省や経産省の助成金を受けて、教育プログラムをいちから立ち上げるということも経験しました。その後2010年に静岡県立大学に赴任してからは、学生のリーダーシップを開発する授業なども手がけました。

ところで研修講師や調査の仕事をしていると、必然的に企業の人事部や教育研修担当の部署の方と話す機会が増えていきます。そうした方との会話の中で、私はいつも引っかかる話がありました。

それは「女性は昇進意欲や学習意欲がない」ということです。
確かに私が担当するリーダー研修や管理職研修では、女性の参加者は少なく、ゼロということも珍しくありません。そのため、女性は昇進意欲や学習意欲が高くないのだろうと私も思っていました。

 しかし、育休中に出会った「働くママ友」のMさんがふと口にした言葉は、そんな私の意識を大きく覆すものでした。Mさんは法人向けの営業に従事しており、そのとき第2子の育休中だったのですが、私に次のように語ったのです。

「第1子を出産して時間の制約を受けるようになってから、営業成績が急によくなった。成果が出たら仕事が面白くなったので、今回の第2子の育休を利用してさらにビジネスを勉強したいと思っているが、ビジネススクールは子連れで通えない。どうしたらいいでしょうか?」

 この話を聞いて、私は「出産〈後〉にパフォーマンスが上がる女性がいる!」と目から鱗がぼろぼろと落ちました。同時に研究者としての好奇心がむくむくと沸き上がり、なぜそんなことが可能になるのかを知りたいと思いました。

そこで彼女と共に、乳児のお世話と両立しやすい学習環境を整えた有志の勉強会「育休プチMBA」を試しに企画してみたところ、想像していた以上に多くの育休中(その大部分は女性)の方にこうしたニーズがあることが分かりました。なお参加の動機は、昇進意欲というよりも、復職後の働き方への不安から来る学習意欲であるようです。

この現象を見た私は、「女性は初めから意欲がないのではなく、職場環境が女性の意欲を下げているのではないか」と考えるようになりました。

そして実際、その視点で職場を眺めると、子育てと両立できない長時間労働の常態化など、意欲を下げる要因が目に付くようになったのです。そして、「ならば女性の学習意欲や昇進意欲があがるような環境を創ればいいのではないか?」と考えました。

「育休プチMBA」では、私が管理職研修で使っていたケース教材をベースに、非管理職で育児をしながら働く女性が当事者意識を持ちやすい形にアレンジして利用しています。この教材で管理職側の視点を獲得することで、参加者は被管理者としての自分を客観視するようになり、組織にとって望ましい考え方を習得していきます。

育休中にこの勉強会に参加して管理職視点を身に着けたことで、復職後に上司との関係がよくなった、労働時間に制約があるにも関わらず育休前よりも評価があがったという報告を聞くこともありました。

出産後の女性たちが高い意欲を持っていることを表すデータや、こうした目の前の事例をいくつか目にするうちに、女性という人材に関する理解が少ないことで、多くの企業が大きな宝の山を逃してしまっているのではないか?と考えるようになりました。

意欲も能力も高い女性たちが、職場環境が整っていないばかりに意欲を失っていくのは企業にとっても大きな損失です。ですが、この経営問題は教育という手段で解決しうると私は考えています。

(※なお基本的なスタンスとして、女性がこどもを持つか、仕事を続けるかは個人の選択だと思っています。すべての女性や男性がこどもを持つべきだと考えているわけではありませんし、育児に専念する生き方を否定しているわけでもありません。仕事を続ける場合も、キャリアアップだけが幸せだとも思っていません。しかし、選択肢を多く持つということは、豊かな人生につながると考えています。働きたいのに働けない、キャリアアップをしたいのにできない、両立したいのに諦めざるをえない。そうした状況に陥る人を減らしたい、人生の選択肢を多く持てる人を増やしたいと考えています。)

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