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2019/3/11

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モチベーションはどうしたら上がるのか

ワークシフト研究所
研究員 小谷恵子

こんにちは。
ワークシフト研究所の講師 兼 研究員の小谷恵子(経営学博士課程)です。
先日、東京マラソンで友人たちの応援をしました。

雨で気温が低く、厳しいコンディションでしたが、ランナーはみな一心にゴールを目指していました。
実はホノルルマラソンを2度経験している私ですが、あんな冷たい雨の中では絶対無理(今はいずれにせよ無理ですけど)。38,000人のランナーたちはいったいどんなモチベーションがあって参加したのでしょうか?

皆さんがよくご存じのモチベーション理論(経営学)は、マズローの欲求階層説でしょうか。
5つの階層があって、「生理的欲求→安全欲求→社会的欲求→承認欲求→自己実現欲求」の順に低次の要求が満たされると次の欲求を満たそうとする、というものです。

これをきっかけに、様々なワーク・モチベーション研究がされてきました。
職務満足との関係を表したハーズバーグの二要因理論、マクレランドの達成モチベーション理論、ロックの目標設定理論、ブルームの期待理論、そして、ハックマンとオルドハムの職務特性理論・・・、研究は多様な視点を取り入れながら進化してきました<参考文献『組織行動 理論と実践』(エヌエヌティー出版)須田敏子著>。
時代と共に理論は進化し、実務ではそれらを取り入れ、試行錯誤しながら制度を運用しています。

日本の会社でも成果主義が取り入れられるようになり、目標管理制度を導入して人事考課を行うところも増えてきました。
目標設定や評価に自身も参加し、上司からのレビューを受けている人も多いでしょう。この仕組みは目標設定理論をベースにしていますが、どんな目標を設定し、どう評価すればモチベーションやパフォーマンスが上がるのか、あなたの会社ではきちんと理解して運用できているでしょうか。目標管理シートを書いている本人はどうでしょうか。

何を書けばよいのかわからない人やこの制度の目的が不明な人は、モチベーション理論を勉強してみることをお勧めします。
理論を理解することで、仕組みが分かり、制度の評価ができるようになります。

理論なんて机上の空論というのは正しくありません。理論は多数の研究者の実証の上に成り立っているからです。
ただし、理論は反証され、新しい視点が加わり、進化していきますので、いつまでも昔の理論で考えていてもダメでもあります。

「モチベーションは、マズローでしょ」で止まっていては、優秀かつ必要な人財にはなれません。また、部下や同僚のモチベーションを上げることもできないでしょう。

では、どうやったらモチベーションを上げる(あるいは保つ)ことができるのでしょうか。

冒頭の話に戻りましょう。
東京マラソンに参加する人は、様々です。陸上競技の選手、ランニングクラブに所属する市民ランナー、健康や趣味のためにランニングしている人、体力に自信のある人、寄付集めのチャリティーランナー、結婚やプロポーズのイベントとして挑戦する人…、全員に共通するモチベーションの源泉は何でしょうか。

一つ共通して言えることは、「できそう」と思う気持ちかと思います。
「日本人〇位に入れそう」「〇時間を切れそう」「完走できそう」「20キロまではいけそう」など。
目標の設定値はそれぞれ違いますが、いずれも、自分には難しいかもしれないけど、ひょっとすれば手に届くかもしれない目標が設定されています。

難しすぎる目標はモチベーションにはつながりません。

そして、そういう目標が達成できた時の達成感や周囲からの称賛による高揚感は、過去の成功体験から想像することができます。逆を返せば、モチベーションを上げる目標設定は人によって違います。また成功体験が少なければ、「できる」と思うことが難しくなります。

同志社大学の太田肇先生は、自分のモチベーションを上げるのに最も効果があるのが、「野心」と「ナルシズム」だと述べています<『最強のモチベーション術』(日本実業出版社)これは先生の私見であり、理論に基づくものではありません>。
私はとても面白い視点だと思います。人は、楽観的で自信家の方が成功できる、ということだそうです。

自信がつくと楽観できるようになります。ですから、多くの人の課題は「自信」を持つこと。とはいえ、「仕事をする上で、楽観と自信を持ってください」と言っても、女性には難しいかと思います。
なぜなら、職場では自信につながるような「配慮」がされていないことが多いからです。
ではどうすればよいのか。

職場で自信がつかないのなら、他で自信をつければよいのです。

例えば、興味があるコミュニティや勉強会に参加してみてください。1回で終わりではなく、継続的にできるものがよいでしょう。その場所で仲間を作り、議論をし、お互いに素敵なところをほめてください。相手も、あなたの素敵なところを見つけてほめてくれるはずです。

ポイントは、単に遊び仲間ではなく、何か目標に向かって集まる良質な集団の一員になること。その集団と一体化することです(悪質な集団の一員にはならないよう気を付けてください)。

例えばMBA。私がMBAに入った理由は、自分に無かった経営の知識や経営者としての視座という知識欲を満たしたかったからで、そこそこ真面目に勉強をして1年次には成績優秀者に、修了式では総代になりました。
しかし、なにより価値があったのは、私を認めてくれる先生や仲間に出会えたことでした。お互いにぶつかりながらも高めあうことができる尊敬できる人々が、自分を認めてくれたことが、大きな自信になっています。

ワークシフト研究所の管理職コースやWSIプチMBA、育休プチMBAでも、同じように仲間に出会うことができるでしょう。

どんな集団の一員になるのか、誰かと比べる必要はありません。目標に優劣はありませんから。

あなたはあなたのまま、興味を持った目標に、少しの勇気を持って一歩踏み出してみればよいのです。きっと一時的なモチベーションではなく、人生を通して持てるような深いモチベーションを持つことができると思います。

お子さんがいる場合、どうすればこどもにやる気を持たせられるか、頭の痛い問題です。
太田先生が正しければ(正しい気がします)、小さいころから適度な楽観と自信を持たせることが有効となるでしょう。難しすぎることに挑戦させるのではなく、少し難しい、でも本人が「できそう」って思うポイントを見つけて、目標を設定し、クリアしたら思い切りほめて成功体験を作る。すごくいい例として「公文式」があります。
先生が生徒一人一人の目標管理をし、少しだけ上のハードルを常に設定して、達成できたらほめます。さらにシールがもらえて、成績が優秀なら表彰されるのです。公文式である必要はありませんが、そういう環境を作ってあげることは、将来成功する人間になることにつながる、という意味で大事だと思います。
100点を取ることが成功体験ではなく(←ここ間違えない)、「頑張れば90点を取れるかもしれない」と本人が思い、「90点が取れた」らほめる、これが成功体験になります。

つまり、モチベーションを上げるには、自分をアゲてくれる他者が必要なのだろうと思います。

子供にはそうしてくれるオトナが、自分にも同様に仲間が必要です。非難したり無関心でいたりする人ではなく、認めてくれる、ほめてくれる、方向修正してくれる、一緒に前を向いてくれる、そんな人に自分がなり、そんな仲間を見つける。そんな努力をしてほしいなと思います。

モチベーションは、リワードや公平感などによっても変わりますが、これはまた別の機会に。

(了)

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