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株式会社ワークシフト研究所

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2018/12/21

コラム

【コラム】女性の管理職を本気で増やしたい企業のご担当者様へ(前編)

ワークシフト研究所 代表取締役社長 小早川優子

女性管理職育成における注意点について、前編後編で書きます。

弊社には、「女性管理職を増やしたいがどうしたらよいかわからない」というご相談をたくさんいただきます。

「いろいろ試したけれどうまくいかない」という場合もあれば、「このようなセミナーを考えているけれどどう思いますか?」というご相談内容があります。実際に施策を打ったのに上手くいってない企業のご担当者様にお話を伺うと、残念ながら効果がない施策を行っているケースが多い状況です。女性管理職育成の施策の内容を伺う度に、「そりゃあ、逆効果でしょう」と思わず呟いてしまいそうになります・・・。

効果が低い、逆効果な施策の代表例を以下にまとめます。

効果がない施策の代表例 1

今、社会で活躍している女性を会社に招いて、女性社員のためにセミナーや講演をしてもらう。

ロールモデルは大事!という観点から、本当によく行われる施策です。「弊社の女性社員の意欲を高めて欲しい、なんなら喝を入れて欲しい」というコメントもいただきますが、残念ながら効果は低い、どころか、場合によっては逆効果になります。

「現時点で」活躍している女性の多くは、ある意味、男性社会に迎合している女性、もしくは男性社会で活躍できる女性の場合があります。そのため、今後活躍を期待されている女性からの目線では、セミナーで講演している女性はロールモデル、ではなく、「反ロールモデル」になります。

つまり、講演を聴きながら「あー、私はあんな風になりたくない、あんな風になるなら管理職なりたくない」と考える女性が多いのです。しかも、そのような女性から喝を入れられてしまう場合、多くの女性は、管理職に対する意欲を高めるどころか、冷めた目で講演者の女性を見てしまいます。

学歴、職歴がキラキラな女性(高学歴、大企業勤務者、専門職など)による講演もあまりお勧めしません。多くの女性は、「私は留学してないから無理」「私はあんなに優秀な学歴じゃないから無理」と、劣等感や疎外感を植え付ける結果に繋がります。

私の経験では、活躍した女性に触発される方は聴講者全体の1−2割、逆に劣等感を感じるのが6−7割くらいだと感じます(残りの1―2割の方は、セミナーや講演などの影響を受けない人でしょう。この中には、意欲がもともと高くて影響を受けない人もいれば、なにをしても意欲が低い人、この両方が存在すると思います)。

もちろん、全てにおいて効果がない訳ではありません。講演の内容や講演者によって効果がある場合もあります。マイノリティの立場でもがいた経験がない方には、劣等感を感じるか、感じないかの判断をするのは難しいことだと思います。マジョリティに属する「男性」で効果がある、と判断した育成方法を実施するのはかなり危険が伴うことです。

効果がない施策の代表例2

女性管理職の下に育成を期待して女性社員を部下にする。

弊社の調査でも、有望な若手女性社員は女性管理職のチームに配属される傾向があることが証明されました*1。会社としては良かれと思った施策であるのは重々承知していますが、この施策も効果はない、どころか、逆効果になる場合が多々あります。

なぜ、効果がないのでしょうか? 
男性の場合、学力や実績以外の要素で昇進する場合が女性よりも多く、つまり、例えば「仕事ができない」と陰口を叩かれていても昇進している男性が比較的多く存在するのが、現状です。したがって、「あの人でもあのポジションに上がれるんだ」「管理職にいるあの人より俺のほうが仕事できるんじゃないか?」と思った経験がある方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

一方で、女性の場合、どこから見ても実力のある、非の打ち所がない女性ではないとなかなか管理職になりません。そうでないケースもありますが、男性と比較すると、女性は実績で評価される傾向が男性より強く、学歴や実力と役職に正の関係があります。そして女性の場合は残業含む勤務時間の長さと役職に正の関係があります。

優秀な女性上司の下に置かれる女性部下たちは、女性チームに置かれたことで、男性上司から排除されたのではないかという不信感も持つ可能性があります。
例えば、「女性である自分が面倒だから、異動になった」と、男性上司の思いとは別に、妄想、推測してしまうのです。また、優秀な女性上司と比較され(自らも比較してしまい)自信を喪失し劣等感を持つようになり、せっかくの能力を発揮することができなくなってしまうこともあります。ましてや挑戦的な仕事やポジションに挑む意欲さえ失われていくのです。これは暗黙の了解である、男性には男性の気持ちが、女性には女性の気持ちがわかる、という前提が間違っていることに他なりません。

「他人と比較なんてしなければいい」と思う方も多いかもしれませんが、
女性の方が男性より同性と自分を比較する傾向が強いことは、ニューヨーク大学の研究者の研究によって明らかになっているため、私は考慮する必要があると思っています。*2 

他にも、ダイバーシティに関することを「女性だけ」で組織させたり、女性に関することは女性だけの問題としたり(女性の問題は、社会の問題であり、社会の問題は、男性の問題でもあります *3 )、人それぞれ多様なケースがあるのに「女性」と一括りにして捉えたり、女性社員を思わず「女の子」と言ってしまったり・・・例を出すと、キリがありません。

施策以前に、女性が活躍する組織を作るつもりが、意図せず女性が活躍できない、活躍したくなくなる土壌作りをせっせとしている企業も多くあります(善かれと思ってされているのは重々承知していますが・・・)。

また「女性自身にそもそも意欲が低い」と思われる方も多いと思います。

次回は、「女性って、管理職に対する意欲あるの?」の実態について書きます。


*1 株式会社ワークシフト研究所 2018年調査「管理職に対する女性社員のマインド形成」より抜粋
回答数:906(男性:N=93 女性N=813)回答者年齢:主に30代(全体の68%)回答者属性:正社員非管理職(全体の75%)
アンケート調査概要:心理測定尺度を含む、「女性のキャリアに関する現状」に関する多角的なアンケート調査
*2 Forbs 12月6日「シェリル・サンドバーグがバッシングを受ける理由より抜粋
*3 キャロライン・ケネディ元駐日大使のスピーチより

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