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株式会社ワークシフト研究所

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2018/9/11

コラム

働き方改革のための経営学 ~女性活躍と生産性向上における職場マネジメント~Vol.2

Part2 女性活躍と働き方 6月に慶應丸の内キャンパスで行ったオープンセミナー 「働き方改革のための経営学 ~女性活躍と生産性向上における職場マネジメント~」 の内容を4回にわたり、コラムでご紹介いたします。 Part1では、これまでの働き方と働き方改革に触れました。 Part2では、「育児中の女性」「介護中の社員」など時間に制約がある社員が高いパフォーマンスを発揮するにはどのような課題があるのか、詳しく見ていきます。 ■制約社員1 育児中の女性 ワークシフト研究所では、基本的に残業できない状況にいる社員を「時間的制約人材」と位置付けています。時間的制約人材の代表例は育児休業から復職し、小さな子供を育てながら働く男女、そして今後は介護をしながら働く管理職クラスの男性も含まれるようになるでしょう。 ここでは、よりデータが取りやすく多くの企業でも課題となっている「育児中の女性」を中心に考えたいと思います。今、政府も「女性が輝く社会」」に向けた施策を次々と出していますが、一番最初に解決すべき女性活躍における課題は、「子育て期の離職」です。まだ日本の社会では、出産を機に5割以上の女性が離職をします。 離職をしない女性も、マミートラックに不本意にも乗せられたり、両立の困難さから自らマミートラックに乗る人もいます。昨今は、両立への理解が深まり、企業の制度も高まっていますが、施策が「業務軽減」を目的とした「優しい」施策中心であるため、子供を持った女性が管理職や責任のある仕事から遠ざかることになり、課長相当職以上の管理職全体に占める女性の割合は6.6%(2013年,厚生労働省「雇用均等基本調査」)と諸外国と比較すると活躍というにはまだまだ、という現状です。    管理職の女性が低い理由をもう少し考えてみたいと思います。 まず、制度面ですが、日本の子育て支援の制度は諸外国と比較して整っていると言えます。    現在、日本の8割以上の事業所で育休制度が利用されています。アメリカには給付金のある育休制度はなく、フランスでは給付金は最長6か月(第1子)です。 制度に問題はないと考えます。だとすると女性自身の働く意欲に原因があると思えますが、 出産後の女性は、働く意欲も高いことはデータからもわかっています。 つまり、本人の働く意欲がありながらも離職する「不本意離職」の女性がかなり多いと考えられます。 第1子出産をきっかけに離職する人の5割が産育休中、4割が復帰後1年以内となっています(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成20年度 両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究」)。    このことから、女性の管理職が少ない理由は、当事者の意欲以上に、個人や企業が、こどもを持つことで直面する働き方の変化に適応できていないことが原因であると言えます。 子どもが生まれると、子どもに合わせた生活パターンに移行せざるを得ません。 具体的には、18時までに保育園にお迎えに行き、19時までにごはんを食べさせ、21時までに就寝させるといったライフスタイルとなるのです。この生活パターンの変化に働き方を適応させることが復職後は必須となります。 理想の働き方調査をみると、「残業なし、短時間、在宅勤務」と、子どもに合わせたライフスタイルを送れる働き方を望んでいることがわかります。 問題は意欲ではなく、労働時間であることがこれらのデータから明らかになっています。 男性の育児休業取得率は毎年少しずつ上昇して2017年度は5.14%というデータがあります(厚生労働省)が、厚労省は20年度までに男性の育休取得率を13%にする目標を掲げてますので、まだまだです。 筆者が講師を務めている上智大学で大学生にとったアンケートでは、7割ほどがとれるものなら育休をとりたいと考えています。優秀な若い労働力を獲得するためには、その世代がどういった志向を持っているのかを踏まえる必要があります。 ■制約社員2 介護中の社員 時間の制約がある社員で、もっとも懸念されているのが介護を抱えた社員への支援方法ではないでしょうか。 (以下介護社員の支援ための支援 矢島(2017)「仕事と介護における両立のかたち」より抜粋) • 介護は制度利用率が低く、実態が育児以上に捉えにくい。 • 時期が予測できる育児と異なり、ある日突然直面し、期間も予測しにくい。 • 対象となる社員は40代、50代が多く、管理職や中堅社員など基幹的な責任を担っているケースが多い • 5年以内に介護をする可能性があるとする割合は40代以上で72.6%、うち95.9%が不安を感じている(2012年調査)。 介護に直面した社員が両立できる環境に必要な働き方とは • 長時間労働の抑制 • 休暇取得や支援制度が利用しやすい環境 • 上司の理解 と、基本的には育児中社員と同じですが、長期休暇より頻繁な短期休暇や時間調整が長期に渡って必要となる=暫定対応ではなく、恒常的な業務改善が必須となります。 ■働き方改革は今後の生存戦略 育児をしながら働く社員、介護との両立に困難を感じている社員の多くは組織のメンバーとしての責任を全うできていないということに罪悪感を抱えています。そして罪悪感はパフォーマンスを下げます。 「休んでいいよ」と言うより、「休んでも問題なく職場が回るしくみ」が必要です。 日本は長らく同質性の高さを前提とした組織風土や職場管理、人事管理システムを強みとしてきました。しかし、今後はそれらが大きなリスクになります。 働き方のダイバーシティに適応した職場環境とマネジメント人材がいることで、人材や能力を顕在化させ、高い生産性で競争力を保つことが可能です。 Part3では、ダイバーシティと女性の活躍について言及します。 ※詳しくは『働く女子のキャリア格差』(国保祥子:ちくま新書2018)

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