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2020/5/3

学術論文

在宅勤務の管理tips:その①職場の制度編

ワークシフト研究所
所長 国保祥子

育休プチMBA®代表、静岡県立大学准教授の国保です。

この1ヶ月、急遽在宅勤務を取り入れる企業が増えてきました。
職場で顔をあわせない中での業務に苦労している企業や管理者も多いのではないかと思います。
育休プチMBA・WSIプチMBAはこれまで8,400人近くの方が受講していますが、育児をしながら働いている人たちの中では以前から在宅勤務制度を利用する人が少なくありませんでした。
在宅勤務制度は、育児をしながら働くうえで大変ありがたいしくみです。
しかし今回は体制が整う前に実践に入ってしまったために、在宅勤務の管理ノウハウや体制の不足から在宅勤務が難しいと感じている管理職や個人も多いようです。
そこで職場における人や組織を研究する経営学者として、育休プチMBA等の勉強会参加者コミュニティで在宅勤務をうまくまわすための知恵を募りました。

本来であれば、「リモートワーク」の価値は、自由な働き方が選べるという点にあります。
但し現状では選ぶ余地がなく「在宅勤務」をせざるを得ない(またはしたいのにできない)という環境下にある人が多く、その選択できない不自由さがストレスを募らせています。

これからの不確実な社会に前向きに適応するために、そして状況が落ち着いたときにリモートワークの価値を実感し、選択できる企業や個人を増やすために、私たちのこれまでの知恵と経験が役に立つことを祈っています。

※なお通常の在宅勤務では、こどもが在宅していることは想定されていません。こどもの相手をしながらの在宅勤務の難しさは、少子化対策と労働力不足(特に女性活躍)への対策は保育・教育インフラの充実とセットで考えなくてはならないという以前から指摘されている点でもあり、今まさに実感しているご家庭が多いことと思います。
女性の活躍とこどものQuality of Lifeは、保育・教育インフラによって支えられていることを実感するとともに、こどもの保育や教育に携わっている全ての皆さんに心より感謝いたします。また共働き共育ては、パートナーとの協力体制が大前提でもあります。

以下のカテゴリーに分けて説明していきます

①職場の制度:会社として整えるべきハード面(環境や制度)

制度関係

まずは在宅勤務制度です。通常はこどもが在宅時は在宅勤務ができない、週に1回は出社する、派遣社員など非正規社員は在宅勤務ができないなどの制限がある会社もありますが、今回の緊急事態宣言を受けての出社停止や休校・休園によってその制限を緩めているようです。そのほかコミュニティで集まった情報としては以下のようなものがありました。

  • 時間単位での在宅勤務、リモートワークが可能な制度。(事前申請が必要なもの、不要なもの)
  • 業務に向く机や椅子がないという環境の社員がいる。家族がいて家が広い人はともかく、ひとり暮らしの若いメンバーには会社負担での家具のレンタルサービスを検討したほうがよい
  • 各種クラウドサービスの導入
  • ペーパーレス化およびハンコ文化の撤廃または縮小。ハンコがないと進まない業務は在宅勤務に適さない
  • 郵便物対応のための交代出勤制度(一部の社員だけが出社しなくてはならないという状況を回避)

システム環境

コミュニティでは、以下のようなシステム環境を利用しているという情報が集まりました。

  • VPN接続など自宅からデータへアクセスできるパソコン、私物PCからアクセスできる仮想デスクトップ(VDI)環境、デバイス管理ソフト(Airwatch等)が入った社用スマートフォンなど、社外業務体制
  • Web会議:Cisco Webex Meetings、Skype for Business、Google hangoutやZOOM。WEBカメラが使えず音声のみの会社もあるが、通話音質が悪い、相手の表情や状況が見えないことで神経を使って疲れるなどの課題がある。
  • 社内コミュニケーション、クラウドストレージ:Cisco Webex TeamsとMicrosoft Teams、Slack、Box、esa(https://esa.io/)、atlassianのconfluence等。会社の内部ポータルサイトの閲覧、勤怠登録なども社外から。
  • 電話:Daialpad(代表電話はIVRで部門代表電話に転送→部署代表電話は外注の受付担当が受けてslackに連絡する運用)等
  • Fax:紙ではなくfax用メアドに届く設定
  • 営業活動:ベルフェイス等
  • コーポレート業務:Freee等

社員の健康管理のしくみ

企業の予防医学は一次予防(社員を病気にしない)、二次予防(病気の早期発見)、三次予防(病気をそれ以上悪くしない)に分けられますが、会社としてやるべきは、「病気を予見できる状態で、発症(結果)を回避しなかった」という状況を避けることです。
普段であればメンタル疾患などは勤怠が荒れるという現象で早期発見ができる(二次予防)のですが、在宅勤務中ではそれが発見しにくくなるため、業務が遅れたり、レスポンスが遅くなったりという現象で代替したり、そういう状況が発生しているときに発見しやすいしくみが必要となります。

また一次予防策として、在宅勤務でも雑談ができる時間やスペースを提供したり、Zoomで同時双方向型のストレッチ時間や、テレランチなどの企画をしたりということも有効です。

なお会社は「安全」配慮義務はありますが、個人の主観である「安心」は個人差が大きく、ゼロにできるものではないため、会社としてはまず安全への配慮方針を決め、余力で個別の安心への配慮方針を決めるとよいようです。

*【勉強会参加者限定コミュニティ】は、育休プチMBA®、WSIプチMBA、その他㈱ワークシフト研究所の勉強会・セミナーに参加された方のみが参加できるFacebook上の限定コミュニティです。セミナーに関する講師陣への質問はもちろん、参加者同士が働き方や子育てなどに関する情報を交換しています。

次回はその②職場の管理編です。


◇関連記事
在宅勤務の管理tips:その②職場の管理編
在宅勤務の管理tips:その③自宅の整備、その④個人の意識

※ 「在宅勤務の管理tips」は、国保が職場における人や組織を研究する経営学者として、育休プチMBA等の勉強会参加者コミュニティで在宅勤務をうまくまわすための知恵を募り、取りまとめ、経営学の知見を元に整理したものです。経営者・人事担当者、そして様々な立場・状況で働く方の働きやすさ、生産性向上にお役立ていただければ幸いです。


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