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株式会社ワークシフト研究所

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2016/1/18

コラム

わたしたちが解決したいこと

①日本は、女性の力を活かしきれていない活躍度指標の代表例である管理職における女性比率が、日本は11.2%と世界に比べても著しく低くなっています。World Economic Forumが発表している男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数においても、2016年の日本の順位は144か国中111位。中でも経済活動の参加と機会が118位、政治への関与が103位と、政治経済への女性の関与が特に低水準です。

(出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較 ②なぜ、日本の女性だけが離職するのか?

社員に占める比率が4割であるにもかかわらず管理職はわずか1割である理由は、多くの女性が出産を機にキャリアを中断するからです。年齢別の就業率を見ると、30代の就業率が下がるM字カーブ現象が日本だけに見られます。日本では、第1子の出産で働く女性の約46.9%が離職しており(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」)、大卒・院卒の女性でも30代では70.7%しか就業していません(出典:総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」)。知識も経験もある30代が現場を去ることは、企業にとっては大きな痛手です。

なお永瀬ら(2011)の調査では、女性が結婚等で一度仕事を辞めると再就職で年収300万円以上の職に就ける人は12.0%で、55.8%の女性の再就職は年収100万円前後のパートタイムとなっています(出典:永瀬伸子・山谷真名・金秀炫 小檜山希・佐野潤子・寺村絵里子 2011「仕事と生活に関する女性WEB調査」)。つまり、出産でいったん仕事を辞めて、子育てが落ち着いたころに再び正社員として就職できる人は、1割程度です。

注: アメリカ、イギリスの 「15~19」 は 「16~19」 のデータ (出典:労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2016」) ③育休制度も就業意欲もあるのに、離職する日本にだけあるM字の谷ですが、これは制度の不備とはいえません。現在日本の8割以上の事業所で育休制度が利用されていますが、アメリカには給付金のある育休制度はなく、フランスでは給付金は最長6か月です(第1子)。また、女性本人の就業継続意欲も高く、20~34歳の女性の就業継続意欲は、出産前よりも出産後の女性の方が高くなっています。つまり、働く意欲がありながらも離職する「不本意離職」の女性がかなり多いと考えられます。そして第1子出産をきっかけに離職する人の5割が産育休中、4割が復帰後1年以内となっています(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「平成20年度 両立支援に係る諸問題に関する総合的調査研究」)。当事者の意欲以上に、個人や企業が、こどもを持つことで直面する働き方の変化に適応できていないことが原因であると考えられます。

(出典:厚生労働省大臣官房統計情報部「第1回21世紀成年者縦断調査の概況」、有職・有配偶者・正社員で出産の意思がある女性) ④不本意離職の理由は、日本企業の働き方不本意離職である「仕事を続けたかったが両立が難しかった」と回答した人の理由のトップは、勤務時間です。子どもがいると夕方の保育園のお迎えから寝かしつけまでを退社後にこなさなくてはならず、残業を前提とする働き方ができなくなります。そして、日本ではこどもを持つ女性は男性の4.6倍の時間を家事育児に費やしており、そのため就労時間を調整せざるを得ないのです(出典:総務省統計局「平成23年社会生活基本調査結果」)。 そもそも、なぜ残業が前提となっているのでしょうか。筒井は「仕事と家族」(2015年,中央公論新社)で日本の正社員に特徴的な働き方として、職能資格制度(能力主義)に基づいた仕事には職務内容の無限定性、勤務地の無限定性、労働時間の無限定性の3つの「無限定性」があると述べています。これはつまり、働く内容・働く場所・働く時間については会社の言う通りにすることの引き換えとして、従業員は相対的に高い賃金と長期雇用を手に入れるというのがこれまでの日本の会社での働き方だということです。これは結果的に長時間労働や家庭の事情を考慮しない転勤も受け入れることが必然となり、結果的に子育て中の女性をはじめとする働き方に制約を抱える人材を活かしきれていない状況につながっています。

(出典:厚生労働省大臣官房統計情報部「第1回21世紀成年者縦断調査の概況」、有職・有配偶者・正社員で出産の意思がある女性) ⑤限られた時間で成果を出すマネジメント人材がいくらでも選べる状況であれば、無限定性を受け入れられる人材だけを選んでも問題はないでしょう。実際、日本の高度成長期を支えたのは高い同質性の組織です。しかし、これから日本は人材が足りなくなることが分かっています。以下の図は2014年の生産年齢人口は7,785万人ですが、2060年には4,418万人とほぼ1/2になります。今後、意欲と経験のある人材は争奪戦になるでしょう。そのときにカギとなるのは、限定的に働く人を活かせる職場をいかにつくるか、意欲と経験のある人材を辞めさせないかが、企業の競争優位になると考えられます。そうした人材の代表例が子育て中の女性ですが、シニア人材や介護を抱える人材も同様です。 そして、無制限に働く人を前提としたこれまでのマネジメントから、限られた時間で成果を出せるマネジメントにシフトするには、管理職や働く個人の意識を変える必要があります。ワークシフト研究所では、こうした限定性を前提としたマネジメントの知見を蓄積すると同時に、管理職および個人の意識変革を実現します。

(出典:国立社会保障・人口問題研究所「平成24年日本の将来推計人口」,推計は出生中位・死亡中位推計)

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