ホームユーザーボイス 株式会社朝日広告社の水溜弥希さまと、上司の羽田さまのインタビュー
株式会社朝日広告社の水溜弥希さまと、上司の羽田さまのインタビュー

株式会社朝日広告社の水溜弥希さまと、上司の羽田さまのインタビュー

2017.03.02

個人

今回は、第1子育休時に「育休プチMBA」に参加して2016年9月に復職した、株式会社朝日広告社統合マーケティングコミュニケーション本部マーケティングデザイン局ストラテジックプランニング部所属の水溜弥希さまと、その上司である羽田康祐さまにお話を伺いました。水溜さまは羽田さまの部署に異動して1年半ほど業務をこなした後に第1子を出産し、約1年間の育休を経て、同じ部署にフルタイムで復職。インタビュー時点では、復職後5か月が経っています。現在羽田さまの下でクライアントに対するコミュニケーション戦略を提案する水溜さまの、育休前と復職後の現在を比較しつつお話を伺いました。

―水溜さまの復職後の様子はいかがですか?羽田さま 「復帰前と比べて変化はありましたね。一言で言えば、たくましくなった。育休に入る前は何をやっていいのか分からないという感じで、ちょっと頼りない所がありましたが、今は目標が定まったような印象を受けています。四半期ごとの面談でも、物言いがはっきりしてきました。この変化は、とてもプラスです。内側から出てくるやる気がないと、いくら外から言っても、結局は言われたことしかやらない。ですが内側からやりたいっていう気持ちがあれば、時に僕の予想を超えたものを出してきたりとかしますから。あと、キャリアの積み方の一つとして管理職も視野に入れたいですって言われたのも意外でしたね。育休前は、そういうことを言う感じではなくて、どちらかと言えば頑張りますとは言いつつもどこか迷いがあって、ゆるキャリ志向なのかなと思っていたんですけど、復帰したらバリキャリになっていてびっくりした感じです。でも、これもプラスです。やっぱりやる気があるのが一番ですから。復職後はビジネス本も、すごく読むようになっていますね。周りの同僚よりも勉強してるんじゃないかな。本人も成長している実感があるみたいです。あとは、本人にも言っていることですけど、もう少し自信を持つといいんじゃないかな。自分に自信を持てるようになるには、知識の量や誰よりも考え抜いたという実感などもあると思いますが、最後は場数を踏んでいくことが大事だと思っていまして、そういう場数を踏む機会を作るのは僕の仕事だと思っています。」

―羽田さまは、水溜さまがファシリテーターを務める回に育休プチMBAの見学にきてくださいましたね。いかがでしたか?羽田さま 「びっくりしました。働くママが世の中に増えているということは、頭ではわかっているつもりではいたんです。ただ実際の光景を目の当たりにして、自分はわかったつもりになっていただけなのだということに気づきました。生涯で初めて、小さい赤ちゃんを抱えながらマーケティングや戦略を議論している女性というものを見て、こういう世界だということがわかったという感じがしましたね。見学したことで、子どもを持ちながら働く女性への見方が大きく変わりました。それまでは、小さなこどもを持ちながら働く女性って大変だ、だからとにかく配慮をしなくちゃいけないって思っていました。水溜さんの復職に備えるためにいろいろ調べていたら、『ワーキングマザーに配慮しない上司はデリカシーがない』的な記事がバーッて出てくるんですよね(笑)。だから配慮しなきゃって思っていましたが、あの参加者のモチベーションの高さを見て、仕事を制限したり、いわゆる雑用みたいなものだけをお願いしたりすることが配慮だとは限らないなと思い直しました。むしろ、時間は限られていても、責任ある仕事を任せてあげたほうが、配慮なのかもしれないって考えるようになりました。あと、水溜さんは控えめだという印象だったので、育休MBAでのファシリテーターに自分から立候補したということにも驚きました。え?自分から手を挙げたの?と。じゃあ、ぜひ行っておいでと思いましたし、僕も見学したいなってなりました。(注:水溜さまは復職を予定より短く切り上げたことでファシリテーター担当回が復職後となってしまい、業務を抜ける必要がありました)」


育休プチMBA勉強会でファシリテーターを務める水溜さま

―育休から復職する部下を迎えるのは初めてとのこと。実際に迎えてみていかがですか?羽田さま 「想定していたよりも大丈夫だった、という印象ですね。例えば子どもが熱を出して1週間休むということがもっと頻繁にあるんじゃないかと思っていたんですけど、そういうこともなかったし、こういう業界なので夜遅くまで働くことが多いので、周囲から不公平だという声がでるのかなと思ったらそれもなく。だから、取越し苦労が多かったなと思いましたね。実は水溜さんが戻ってくる前に、部の皆と詰めて話をしたんです。色んな意見があって、仕事量と評価は連動させるべき、それはおかしいとか、色々な声が部内でもあったんですよね。ただ、やっぱり、インフルエンザにかかったり、入院したりということは、お子さんがいるいないに関わらず、僕らにもある話で、そういう時に助け合わなきゃいけないよねっていうので、一致したんですよ。その一致したところに、水溜さんが帰ってきたので、そういう不満はないって感じですね。水溜さんが『先に帰るのはワーキングマザーとしての権利です』という態度じゃないというのも大きいですが。実は、僕も尿管結石で入院して、代わりに新人をプレゼンに行かせたことがあるんです。そういうことって誰にもあるから、別に水溜さんだけの話じゃないよね、と。そうして迷惑をかけることはあるけど、迷惑をかけたら次にお返しをするという関係が大事だから、皆で、協力し合おう、助け合おうっていう話を折に触れてしていますね。」

―残業できないことで、任せられる業務の幅が狭まるということはありますか?羽田さま 「それはあります。例えば、1週間後のコンペに参加するとなると、時間がないので営業との打ち合わせなども夜遅くになります。こういう案件は、水溜さんはちょっと無理だから他の人に任せようか、という風にはなりますね。」

―残業できない人の存在によるポジティブな影響はありますか?羽田さま 「夜遅くまで働くこと自体が、本来なら良くないことだと思うんですよね。広告業界でも、働き方の見直しの動きのなかで、遅くまで働くことが偉いことじゃないというのが分かったんですね。水溜さんが復帰してから、生産性を高めよう、労働時間の長さで評価するのはやめようということを部内でも徹底するし上長とも共有しています。遅くまで頑張っている人が偉い人じゃなくて、目的を達成するアイディアを生み出す人が偉い人っていう価値観に持っていくきっかけになるとは感じていまして、正直、このきっかけがないと、たぶん僕もここまで考えてないと思うんですよ。やっぱり、夜遅くまで働くのって文化祭みたいで楽しいよね、夜遅いけどお菓子でも買ってきて皆で頑張ろうぜという対応だったと思うんですよね。僕自身も、この仕事楽しいからと夜遅くなりやすいんですけど、それは駄目ですねと思いました。今はできるだけ早く終わらせて、早く帰るようにしています。水溜さんの復帰をきっかけに深く考えたことで、長い時間働くよりも、仕事をできるだけ短く終わらせて、空いた時間を工夫に費やした方が質が高まる、そうすることが自社の競争力にも繋がることに気付いたっていうのは大きかったですね。そういう考えるきっかけと、部全体として生産性を上げようという気運を作るきっかけとして、ポジティブに受け止められるのかなと思っています。」

―育休期間中に部下に学んでほしい科目やテーマがありましたら教えてください。羽田さま 「強制はできないですけど、せっかくの機会だし勉強はして欲しいですね。管理職っていう立場から見ると、物理的に一人欠けるのでそれはそれで大変なんですけど、やる気がみなぎって復帰してくれるのはありがたい。やる気を身に着けるって1番難しいから、それが育休中にできるっていうのはいいですよね。具体的な科目としては、欲を言えばキリがないけれど、一番はロジカル・シンキングとかクリティカル・シンキングですね。あとはファシリテーションとかチームビルディング。要は、巻き込んでリードしていく力と言いますか。復帰してから定時内で仕事を終わらせて帰るには待ちの姿勢では難しくて、ある程度は自分が業務をリードしたり、チームをコントロールしたりしないといけない。論理的に物事を考えて、チームをリードして、ファシリテーションして、答えまで落とし込んでいくっていう一連のスキルがあれば、定時でも高い質で業務を完了させることができるのでそこが一番大事かなって思います。むしろそれをやって定時に帰るなら、皆にとって有難い存在になります。」

―ここからは、水溜さまも同席してのインタビューです。復職してみていかがですか?水溜さま 「育休前よりも働きやすくなったな、と感じています。妊娠より前に異動があったのですが、現部署での仕事のやり方が前の部署とあまりにも違っていて、出来ないことの連続で、会社に貢献できてないと焦りがあった状態で育休に入りました。当時は諦めることがけっこう多くて、できないのは自分が悪いと、そこで思考が停止していたのですが、いまはできない時はなぜできないんだろう、どうしたら出来るようになるんだろうっていう方に思考が向くようになりました。それで、その物事に対してどういう問題があるのかというのを分解して考えて、それぞれに対する対応策を考えて、どの優先度が高いかってところまで考えて、行動に落とすことができるようになってきたと感じます。それで自分なりに動いて、少しずつ成果が上がるというか、成長している実感が持てるようになったので、前向きな状態が維持できるようになりましたね。」

―復職後は仕事に対するやる気がすごく上がっていることを評価されています。水溜さま 「仕事へのモチベーションは、実はあまり変わっていません。育休前も高かったのですけれど、それを示せてなかった、示し方がわかっていなかったと思います。やりたい気持ちは、ずっとありました。でも、取り組み方がわからないために、諦めることが多かったですね。それで、できない状態でやりたいというべきではないと思い、やる気を示さないため仕事がきづらく、実践の場面が減るため能力が上がらないという負の循環にハマっていたのかなと今では思います。」

―なぜ、今はやる気を表に出せるようになったと思いますか?水溜さま 「残業ができない働き方になることを素直に受け入れられたことが大きいと思います。以前は『自分が無理して、自分で実力をつけて、自分で成果を上げて』と考えていて、人に頼ることを『悪いこと』だと考えていたように思います。その結果、仕事を抱え込み、進捗報告も後手になり、行動も起こさないと、やる気がないように見える人になっていたのかと。今は『時間がない、ならばどうする?組織から見たら何が正解か?』との考え方に変わったので、素直に人にアドバイスを求めますし、周りに教えてくださいと聞いて回ることも厭いませんし、コミュニケーションをとるようになったおかげでいろいろな情報も入ってきて、結果、冷静に物事を見られるようになってきたように思います。で、できないなりにもがいている、イコール行動を起こしている、イコールやる気はある人と周りから見えるのではないかと推測します。また、制約ができる前は、時間があるからいつかやろうと先延ばしにすることも多かったのですが、いまは本当にやりたいことはすぐにでも行動を起こさないと次はこないという危機感がありまして、グリップする意思が強くなったのかなと思いますね。」

―これは育休プチMBAで勉強したことの影響はありますか?水溜さま 「育休プチMBAの影響は3つあります。1つ目は、長期的視点が得られたこと。現時点や年度の評価ではなく、中長期的にみて自分はどの能力を伸ばすべきで、だったら短期的な評価が下がっても今は何をするべきか、と判断できるようになりました。聞いて回ることはマイナス評価になるのではとつい避けていましたが、自分の拠り所にすべき基準を持てたことで動けるようになりました。2つ目は、組織目線で考える癖がついたこと。自分が活躍することではなく、仕事が成功するためにどの役割をこなすべきか、何を準備しておくべきか考えることで、『今すぐ自分で成果を上げなければ』という間違ったプレッシャーから解放されました。組織への所属意識が高まったので、働くことも楽しくなりました。3つ目は、ケース学習による気づきの効果です。ある復職後の女性が失敗するケースで何が問題なのかを分析していて、『今までと同じように働けるという前提』が一番のネックになっていると考えたのですが、それを自分に置き換えて苦笑いしてしまいました。これは、自分自身が認められずに苦しんでいた点だったので。他人ごとだから冷静に判断できるということ、指摘されるのではなく自ら気づくことでインパクトがあるということ、ストーリーがあることで記憶に残りやすいこと、がケース学習の利点だと思います。」

インタビュー後記
管理職という仕事の本質を理解している羽田さまと、その下で制約がありつつも精一杯の組織貢献を考えている水溜さまの関係は、限りある時間の中で成果を出す職場における上司部下の関係としては理想的です。時間制約のあるメンバーを抱えることが、部署全体に対してポジティブな影響になる可能性を示していただきました。また、女性は遠慮や自信のなさからモチベーションが高いにもかかわらず表面化させない場合があり、まさに育休前の水溜さまもその状態だったようですが、時間制約を受け入れることでその課題を逆に克服できるというのは興味深い現象でもあります。復職後にバックオフィス業務を希望する女性は多いのですが、こういう形であれば、顧客接点のある部署でも十分戦力になれるという具体的事例になることと思います。 (国保祥子)